コンピュータサイエンスはこう学べ (2)

http://d.hatena.ne.jp/ryocotan/20090919/p1 の続きです。

---- 勉強をしている人は、「リファクタリング (ASIN:4894712288)」を読んでるイメージがあります

omo: 主にこの人でしょw

A: そうかなぁw

omo: アジャイル信者の。

A: そういう所はあるかもね。リファクタリングは、2000年ぐらいですかね。ソフトウェアの開発スタイルを変えた一大事件で。2000年以前と2000年以降というのは、リファクタリングをベースに開発するというのと、そうじゃないというのが、大きな時代の区分としてあったんじゃないかな。

---- テクノロジーによって変わったんですか? 元々思想的なものがあった?

A: 半々ぐらいだよね。やっぱりJavaとかが主体になるというのがあって、C++では厳しかったけどJavaなら、っていうのがあって使いやすくなったというのがある。あとはプロセスとかもリファクタリング向きなものになっていったっていうのがあるから、そういう外側の要因と、ただ純粋にリファクタリングに焦点を当てたという、マーティン・ファウラーの功績なんじゃないですかね。「その前からあった」とはみんな言うけど、少なくとも自分はそれを意識して開発してなかったんだけど、リファクタリングを読んで影響を受けて、意識するようになった部分はあるね。

A: 新人が来て、コーディングの文法は知っているという人間に、一番最初に読ませようと思うのはリファクタリング (ASIN:4894712288) かなぁ、と思うけどね。まず、本の出来が素晴らしい。

ひげぽん: うん。

omo: そうだね。薄い!w

一同: (笑)

A: 薄い、ってほどでもないけどねw でもまぁ薦められるよね、あの厚さだったら。特に、後半のケント・ベック (Kent Beck) なんて良い事を言ってるけど別に読まなくてもいいし。

omo: そうそうそうw 構成がいいんですよね。

A: 別に最初の方だけちゃんと読んでおけばいいわけだし。

omo: 最初にモチベートする例を示して、こういう風にやんだぜ、って。

A: あれは素晴らしい本だね。後になって読むほど「あ、こんなこと書いてあるんだ」って気付く事が多いね。知らない時は知らないなりに学ぶことがあって、知ってくると知ってくるなりに学べるという、とても良く書かれた本だと思う。

omo: やっぱマーティン・ファウラーすげーって思う。

A: 思うね、あの本はw マーティン・ファウラーはろくでもない、ってアナリシス・パターン (ASIN:4894716933) は読んでいて思うけど、リファクタリング (ASIN:4894712288) を読むと「あ、こいつ凄い奴なんだな」って、いつも思うよ。

---- 作者は何をやってる人なんですか?

A: Javaの受託じゃないですかね。

omo: アジャイル開発をプッシュする、受託+コンサルみたいな会社のCTO。

A: Channel9とかにたまに出てくるんだけど、人の話を聴かないで自分の話を延々とするというw あんまり華がある感じじゃないんだけど、

ひげぽん: そうなんだ。文章は素敵なのに。

A: そうなんだよねぇw 全然あんなタイプには見えないのに。「ギークとはこういうものか」って気もちょっとする。最近はDSLがお気に入りなんですかねぇ。

リファクタリングは良いんじゃないんですかね。「コードのクリンナップとリファクタリングは違う」って事を明らかにして、リファクタリングのやり方でコードを変更していくという事によって、それまで出来なかったスタイルの開発が出来るようになった、というのが「偉大だなぁ」って思いますね。「試してみて結果を見てから判断する」というのが、それまでには出来なかった事なんだよね。

---- なるほど

A: 設計とかで、Aって設計とBって設計があって「どっちが良いか?」って時に、「こっちが良いんだよ!」って勝手に進めていたところを、リファクタリングが出来るようになってからは、Aを試して、Bを試して、良かった方を選ぶように、実際に試して進められるようになったのが、それ以前とそれ以後の大きな違いなんじゃないんですか。

「プロトタイプをちゃんとやってた」って人にとっては、似たような部分があるかもしれないけど、そこを連続的に進められるようになったというのが大きい。現実の案件とかだと、プレッシャーとかもあるからさぁ。「実施するのに大きなジャンプが必要なテクノロジとか手法」ってあんまり使えないけど、リファクタリングは漸進的に導入できるからね。プロトタイプとかに比べて、大きく開発スタイルを変えたんじゃないんですかね。

omo: (図説中…)

A: リファクタリングの肝っぽいところは、「既に上手く行くと分かっている手順」だけを組み合わせて目的の場所に行く、ってところがクリンナップとの大きな違いだね。「変形できるパターン」というのは、限られた個数のパターンしかなくて、それだけを使って目的の場所に行くというのが肝なんだけど……まぁ、そうじゃない手順もちょっと混ぜたりするけどね。面倒くさいから。

---- 洗練された変形していく手法があると

A: そうだね。それが2005年になってIDEで自動化されて、凄い速度で出来るようになったんで、またそこで5年前とは大きく違ったギャップがあって。2005年以前と以後でね。人によっては2004年かもしれないけど。そこらへんの前後ってのは、プログラミングのスタイルも違うし、出来上がるコードも品質が全然違う。

omo: C++にはあまり関係ない話だよね。

一同: (笑)

A: これは一部のIDE信者的発言なんで(笑)。JavaとかC#が好きな人だけって感じ。「じゃあLLはどうなんだ?」って言われると、LLも劣るとは思わないけどね。そこは良く分からないんだよね。理屈で考えると、「型付きの方が良い」って思うんだけど。実際に書いてそうなのか、って言われるとそうでもなくて。この理論と現実の違いというのは埋めがたいけど。

omo: 抽象化能力は高いですよね、LLは。だから何とか補えるんじゃないんですかね。

A: 「小難しい本」というと、「役に立たない本」ってのがあるんだよね。例えば数学寄りな本? 意味論とか。SICPとかそういうノリがあるけど、あれは半分ぐらい役に立つところもあるんだけど、そういうのもたまに読むけどね。ただ、そういうのはこういう場で話すものなのかなぁと思って。一方、「そんなに読んでるの?」と言われたら、そんなには読んでないので(笑)。「型付きラムダ計算は終了する」とか。おっ、終了するのか、だから何なんだよとか思うわけだけど(笑)。

ひげぽん: (笑)

A: 一部の人には大切らしい(笑)。「有限型のベータリダクションで」みたいな。「だから型付きラムダ計算以外はダメだ!」みたいな人も世の中には居るわけで。そういう本を読んで、だから何なんだと言われると別にね。

ひげぽん: 趣味の世界ですよね。

一同: (笑)

A: コンピュータサイエンスだと、コンパイルより後はそういう世界に入っちゃうけどね。LALR(1)の話とかは、数学っぽいけど現実的な世界なのにねぇ。それより一歩先に進むとろくでもない話になるよね。

omo: 本を読むってのもあるけど、現実の仕事からフィードバックを受けるというのもあると思うんですよ。そのバランスをどう取っていくのか、っていうのが。本を読んで、使ってみて、やってみて、勉強して、またやってみてみたいな。

A: 今やってる事に近い本を読んでる場合は、そういう感じになるよね。凄い良い本に、凄い良い時期に出会った時は、そういう風になるけれど。あんまり多くも無いけどね。

omo: 読む本のチョイスって、割と仕事で困った時に決めるよね。

A: そういう本が丁度あるってのは、良い時だよね。

omo: まぁね。

A: 「勉強が楽しい」と思えるパターンなんじゃないんですかね。例えば、見積もりとかを丁度やってる時に、見積もりの本が出たりして、「あぁ、良いタイミングで良い本が出たなぁ」とか思ったけど。そう多くある事じゃないよね。

omo: なかなか解決しない大きな問題とか……ほっといても進むんだけど気に食わない、ってことあるじゃないですか。そういうのを一年とかの単位でテーマを決めて読む、みたいな。

A: 私はそういう事はあまり無いかなぁ。でもそれは良い話って気がするけどね。

ひげぽん: 僕はもう仕事で役立つとかじゃなくて「貯金型」ですかね、今は。穴埋め型というか。ここが弱いから、あの時に困ったんだろうなぁ、と思いつつ読むみたいな。

omo: 一年ぐらい、性能関係を読んでるんだけど、あんまり読むペースは速くないんで。年に2,3冊なんだけど。

A: いい話じゃないですか。

omo: そういうのがあると仕事で「あぁ、あの時に性能を測っておけばよかった!」みたいなフィードバックがあるな。

A: 性能については言いたい事が沢山あるけど……性能の話は勉強とは全く関係ないね(笑)。

omo: (笑)

A: でもまぁ関係あるところもあるかもね。やっぱり、前は大きい会社に居たんで、大きい会社の良い所はそういう最新の研究成果とかが社内だけに出ている時に、それに触れられるというのがあって。性能というのは自分が居た時はホットな話題だったので、世の中では本にもなっていないような最先端のスタイルみたいなものを沢山読めて、それを実践できたというのは、性能に関して自信があると思える所だね。

---- 性能って何ですか?

A: きゅっと立ち上がって、きゅっと早く見えるとかじゃないの? うちはウェブサイトだったんで、そのページに移ってから出るまでの時間と、いじった時にきゅきゅきゅっと動くという(笑)、そういうのが性能じゃないですかね。色々あるけどね。

omo: 落ちない、とか。

A: 性能っていうのは、今時っぽい開発スタイルを要求するもので、リファクタリングブラウザとかを使って凄い速度でリファクタリングが出来るという前提じゃないと、色々と達成できない方法が前提となっているので。

ひげぽん: へぇぇ。

A:IDEないとダメだよなぁ」というのを、そういうのを通して思って、「ダメだC#以外は」みたいな(笑)。

一同: (笑)

A: まぁ別にJavaでもいいけどね(笑)。「Emacsなんか使ってる奴はダメだ」って話になるわけですよ。

omo: OSをまたいだりネットワークをまたいだりすると、ボトルネックって何だかよくわからなかったな。

A: プロファイルはやっぱり色々あって、計測することにどれだけ時間を掛けるか…ってのは今時と一つ前の世代では違うと思うけどね。性能を測るのに凄いコストをかけて、プロファイラで取る以上の事を色々やるというのは、今時の速さのソフトを作る肝になっていると思うけど。まぁ、そういう話というのは表に出ているものでもないので。

omo: (笑)

ひげぽん: 気になる!

---- Emacsの話が出ましたが…

A: めちゃアンチですよ。

---- 使ってますよね?

ひげぽん: 使ってますね。Aさん、昔Emacs使ってた人ですよね?

A: まぁそうですねぇ。

ひげぽん:Emacs最高!」とは最近は言わなくて、道具の一つなんで、まぁいいよね、ってぐらいです。「リファクタリングブラウザ」とかの話は、反論のしようがない。

omo: (笑)。Emacsの所為でなくて、C++の所為だと。

A: Schemeとかもあるけどね。そこらへんはIDE信者も歯痒いところだよね。「IDE素晴らしいんだよ!」って言っても、でも「仕事でC++なんだけど」って言われると、そこで会話が終わってしまって。

omo: (笑)

A: 「何それ。仕事でPS3なんだけど」って言われたら「知らんがな」って話になってしまうので(笑)。そこから先は分かり合えないので、どうしようもないんだよね。

---- リファクタリングブラウザがあってからこそのIDEなんですね

A: それ以前とそれ以後では違うよね。ただ、ボタン置いて、ダブルクリックして、ハンドラ書いて、ってのも良いじゃん、って思うよ(笑)。

---- コード補完とかいいですよね

A: インテリセンスとか良いよね。IDEとかは、インテリセンス無しだとやってけないよね。長いメソッド名とか打てないから。頭文字が散らばってる方が良いよね(笑)。

一同: (笑)

---- メソッド名の付け方も変わってきますね

A: 長くはなるよね。まぁ、Emacsでも…メタMだっけ、スラッシュだっけ。viだとCtrl-Pとか。その頃も、それなりにあったけど。インテリセンスは別物ではあるけど。

---- 名著五冊みたいなのを挙げて欲しいんですけど……

A: それは難しいねぇ。「新人に読ませたい」とかもあるね。

---- 「自分から勉強しないプログラマ」とかもいるわけですよね

omo: コース別ってことね。

---- とりあえずプログラマとして食っていくための五冊とか(笑)

A: 難しいなぁ。何も読まなくてもいいんじゃね?とかw

ひげぽん: それでも構わないんじゃないですか。

omo: 一緒に働いてるか、って前提がどれくらいかだよね。

---- 一緒にコード書いてるぐらいかなぁ。不勉強な人に苛立ちませんか?

ひげぽん: 自分はないです。周りが優秀なので、何も文句ありません。

A: 私はありますね。やっぱり、前提として知っておいて貰わないとコミュニケーションが成立しない会話とかがあって、設計とかの話をする時とかに、対等に話をしたい場合に知っておいて欲しい事って膨大にあるけど。それは抑えておいて欲しいけど、抑えていてくれる事ってあまりない。自分が思う前提を抑えている同僚ってのは、あんまり多くない。

---- どこら辺を抑えておいて欲しい?

omo: 膨大なんでしょ(笑)

A: 膨大ですね。

---- それを概ねカバーできる名著、みたいなのは難しい?

A: 今まで出てきたような本は良いんじゃないんですかね。リファクタリング (ASIN:4894712288) から始まって、DDD (ASIN:0321125215) を読んで、Working Effectively With Legacy Code (ASIN:0131177052) を読んで、xUnit Test Patterns (ASIN:0131495054) を読めばいいのか?……って言われると全然足りないけれど(笑)。

omo: なんか偏ってるよねぇ。

A: 今仕事をしていて困るのは、そこらへんが多いような気がする。

omo: 最近思うのは、他人に迷惑を掛けないコードを書く、ってのと、自分の中の満足度を上げていくのは別の軸で。

ひげぽん: 他人に迷惑を掛けるコードって、どんなのですか?

omo: バグってるとか、保守しにくいとかですよ。

A: 他人に迷惑を掛けるコード、ってのは多いんじゃないですかねぇ。

---- 他人に迷惑を掛けないようにする、というのは難しいですか?

omo: それは簡単で、Code Complete (ASIN:489100455X) とか、そういう方向だよね。チームで仕事をする時に、同僚の邪魔をしない為のコード、ってのはあるんですよ。最低の品質を保証するためのコード。OSとかコンパイラの本ってのは、読んで無くても割と大丈夫で、そういう本を読んでないとローレベルなレイヤーのものは作れないけど、それはそれで大丈夫で、仕事だとそういう仕事は作れる人に回っていくので。それがただ回して貰えないだけで。誰もが普段書くコードの品質ってのは重要で、そいつにインパクトのある本と、そうじゃない奴ってのは別なんだよ。コンピュータサイエンス寄りなやつってのは、自分の満足度とかハイテク路線。チームとか仕事としてコードを書く時に、他人に迷惑を掛けない為の本というのは、主にデザインとかプロセスの話。

omo: Code Complete (ASIN:489100455X) は、他人に迷惑を掛けないラインの本だよね。

A: 最低限だったら、「Code Complete (ASIN:489100455X)」と「リファクタリング (ASIN:4894712288)」ぐらいかな。「Writing Solid Code (ASIN:4756103642)」を入れるかどうかは、ちょっと微妙。

omo: もうね。

ひげぽん: もういいんじゃないんですか。

omo: 絶版だしね(笑)

A: 俺はあの本好きだけどね(笑)。あれは良い本だよ。迷惑を掛けない、となるとその辺のラインになるのかな。でも足りないような気もするけどねぇ。今言った本を読んで、そこそこのコードを書けるようになるかと。

omo: デザインパターンはどうなのかと。

A: デザインパターン……GoF (ASIN:4797311126) ?

omo: デザインパターンって難しくてさ。デザインパターンは要るけど、「あれか?」って。

A: でも悪くないよ、読み直してみると。どう思います、GoF

ひげぽん: 僕は読んでないです。結城さんの本 (ASIN:4797327030) しか読んでないです。

A: お、読んでないんだ。へぇぇー。GoFを読んでない人がいた。衝撃。ひげぽんGoFを読んでいなかった。GoFは、結構早く翻訳された本として思い浮かぶ本だね。あの頃は、原書が出て一年か二年で小難しい系の本が翻訳されてたよね。ああいう本が翻訳されるのは素晴らしい。GoFは、今時の本があると良いんだけどね。「Visitorとかねぇよ!」って誰かが言えばいいのにね。

omo: (笑)

A: Visotorパターンってのがあるんだよね。「ダブルディスパッチはこうやるんだ!」とか。「やるなよ!」ってみんな思っていると思うんだけど、そういう事が書いてある本なんで。「そっか、これがオブジェクト指向か!」とか思われると、大変たちが悪い(笑)。

omo: 間違ってるのも混じってる、って話なんですよ。

A: まぁ、良い事もあるんじゃないんですかね。

omo: パターンとして紹介されてるんだけど、使える場面がとても限られている。よく使われるようなものとして紹介されると困る。

A: たまに使えるシーンもあるので、一概にダメかというとね。GoFぐらいまでは読んでいいと思うけどね。あれ、何だっけ。

omo: Pattern-Oriented Software Architecture (ASIN:4764902834) ?

A: そうそう。そこら辺まで行くと、読まなくてもいいかなって思うよ。

omo: 何度挑戦しても途中で眠くなっちゃうんだよね。

A: あれは読んだら読んだで「へぇ」ってぐらいだけどねw

CODE COMPLETE 第2版 上 完全なプログラミングを目指して

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リファクタリング―プログラムの体質改善テクニック (Object Technology Series)

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コンピュータサイエンスはこう学べ (1)

voicetrek2009-09-19


コンピュータサイエンスの勉強法について、情熱を持って取り組まれている方々にお話を伺ってきました。

---- 最近はどんな本を読んでいますか?

ひげぽん: Aさんに薦められた "Domain-Driven Design" (DDD) (ASIN:0321125215) という本と、"Programming Pearls" (ASIN:0201657880)」ですね。

---- DDDを薦めた理由は?

A: コーディングに関する新しい本ってあんまり無かったので、最近あまりコーディングに関する本をひげぽん氏が読んでない気がして。あとは、割と良い本なので、みんな読んでおいた方がいい「必読系の本かな」と思っているところがあって。

---- 読んでいてどうですか?

ひげぽん: 日記にも書きましたけど、「ハートオブソフトウェアは何か?」という話に割と感動しましたね。

A: 「ハートオブソフトウェア」ってどんな話でしたっけ?

ひげぽん: ユーザーの生活するドメインの中で叶えたいことを実現するのがソフトウェアのハートの部分であって、テクノロジというのはそれを実現する手段だよ、ハートオブソフトウェアを作るために DDD をやっていきましょう、みたいな導入があって。

---- Domain-Driven とはどういうことですか?

A: DDDというのは、顧客の方の世界を中心としたデザインの事で、例えば、銀行の勘定系だとか、電子回路のシミュレーションをするものだとか「現実の世界の何かを達成するのに作るソフトウェア」で、その時に現実の世界を中心にしてデザインをする、というものですね。

ひげぽん: 自分がSE時代はそういうことをやっていたなぁ、と思いました。ものすごく稚拙でしたが。つまり、お客さん側の世界から考えて、それをソフトウェア側にマッピングする。逆じゃなくて。

A: まぁ、あんまりソフトウェアサイエンスの本じゃないけどね(笑)。こういう展開としては適切かは分からないけど……DDDというのは「話し合いとかコーディングを重視する」っていう方法論で、これは結構、好みなところがあるんですよね。UMLのダイアグラムだとか仕様書だとか、そういうものではなくて、「コードを重視する」というのは好きな方なんで。で、どういうコードを書くか、というのがずっと語られているので、あの本は好きだな。「実例」みたいなものが沢山載っていてですね。「対話をしながらちょっとずつコードを書いていく」というスタイルなんですね。

コードを書くんだけど、話をしているとどうも話の内容とコーディングのモデルが違うと。モデルというのは、クラス名とメソッド名ですね。なんか違う、と。クラスの切り方が話してる内容と合わない、と気付いてちょっとずつ変えていくというのが、物語風に延々と続くという本なんですけど、これが非常に最近の自分の仕事のスタイルに似ていた、と読んでいて感銘を受けてですね、「おー、こうだよ、こう!」と思ったんですね。最近といっても、2,3年前の話ですけどね。「みんなこういう風に仕事したらいいのに」と一人盛り上がって薦めてたんだけど、誰も周りで読む人はいなかったと……。

---- 洋書しかないですよね

A: 洋書しかないですね。これがあんまり内容を読んで話をしている人がいなくてですね。「はし書きしか読んでないだろ!」みたいな人が偉そうに語っていたり、「これはデザインパターンの本である」とか言っていたりと、凄く不満なんだよね。「違うよ!」って思うんだけど。「対話をしてコーディングの質を上げていく」というところが中心なのに、それについで誰も話をしていない。

---- レビューの話ではないんですよね

A: レビューの話ではないけど、似てるね。「ペアプログラミング」をレビューの一種として考えるとすると、あれも広い意味でのレビューに近くて、ドメインスペシャリストと対話をしながらコーディングしていくということで、プログラマと話しながらではないんだけど。ドメインスペシャリストというのはコードを読めるわけじゃないので、コードの中心的な部分を抜き出して、自然言語にしなくちゃいけない、という所が違うところで、自然言語を使って話をして、自然言語を洗練させていく。それをコーディングに反映していくというのが、DDDの肝ですね。いい話だとは思うんだけど、ドメインスペシャリストと仕事をすることは多くなかったので、自分の仕事とはちょっと違うなぁ、とは思うけど。

omo: XPが前提なんですか?

A: XPは前提だし、ある程度リファクタリングベースで開発するという……つまり、発展的デリバティブじゃないけど、ちょっとずつ変更してリリースして変更してリリースして、というサイクルを繰り返していってソフトウェアを成長させていく、ってのが前提になってるね。2003年に書かれた本なんだけど、2003年を感じさせない本だね。2005年ぐらいにIDEリファクタリングブラウザとかが普及してきて、プログラミングの世界が変わったなぁ、と思うんだけど、2005年より後に書かれたような本が2003年に書かれているので、あの本はいつ読んでも違和感があるんだよね(笑)。「なんで2003年なんだろう……こいつ本当に手でやってたのか?」みたいな。

omo: smalltalkerだったとか。

A: いやー、Java使いっぽいけどねぇ、エヴァンズ (Eric Evans) は。

---- 著者は何の専門家なんですか?

A: Javaの普通の受託の専門家っぽいですねぇ。マーティン・ファウラー (Martin Fowler) が前書きを書いてるんだけど、何処でも「マーティン・ファウラーが書いた本」って書いてあって「書いたのはエヴァンズだ!」っていつも思うんだけどw

omo: それは酷いw

A: 本当に内容を見てないよなぁ、みんな。

omo: マーティン・ファウラーのキャラじゃないしね。もっと情熱的なんですよ。

A: エヴァンズの方が、そこはいいよね。マーティン・ファウラーは人の話を聞かないよね、基本的に(笑)。そういう感じではない。「コンピューターの勉強」的な話に戻ると……私は最近そういう本を全然読んでないけどね。

ひげぽん: 前提として、Aさんはこれまで凄い量の本を読んでるんですよ、と読者の人に伝えないと。

---- 凄いんですよ、Aさんは

omo: (笑)

A: そんなことはないですが。何故そういう本を……そういう本って区切りも難しいですが、なぜ「教科書的な本」を読んだ方がいいと思ったかというと、そこには、過去に色々と経験をした結果、良さそうだと思ったひとつの答えが書いてあるからで。「体験をすると経験は得られる」んだけど、それが正しいか間違ってるかは、それだけじゃ分からない、という欠点がある。本になっているのは、もう少し多くの例を見た上で、良さそうなモノをピックアップしているので、「経験よりは少し正解に近いもの」が載っている。それを知らずに自己流にやっていると、沢山の例の中からピックアップされたものに比べると、やっぱり劣っている事が多い。

だから、正解を知っていた上で……まぁ自分の場合上手く当てはまらない事が多いので、合うようにアレンジして、それに近い、でもちょっと違うものとして開発していく方が、正解を何も知らずにランダムに当たっていって「良さそうになれ!」と祈るよりは、随分効率が良いと。そう思っていたので、「正解集め」のような事をしていたのが理由ですかね。

---- 実際活かしていけました?

A: そういうのを活かすのは上手い方じゃないかなぁ、とは自分では思うね。「そういうのを読んだらみんな活かせるか」と言ったらそうではないと思うけど、そういうのをちょっとアレンジして適用するのが上手い人はいると思うし、自分はまぁまぁ上手い方だと思う。例えば、OSの本とかコンパイラの本を読むってのは、「色々作ってきた結果、これが良い設計なんだ」ってことなので、OS以外のモノを作る時にも、そういうのを真似して何となく作る方が割と良いものが出来やすい。そういうひとつの正解例を知れるわけで。OSは作らないけど、OSの本は読むという。

ひげぽん: でもそれって、ヒット率が高くないと意味がないですよね、さっきの話からいくと。ヒット率を上げるためにしている事ってあるんですか? つまり「当たりの本を引く」とか「当たりの分野を引く」とか。

A: 本の選び方でいえば「有名な原典に当たる」ってのを重視してますね。そいつを読んだ後にそれに影響を受けて書いた本よりは、最初に書かれたような本をなるべく読むようにはしてます。そうするとやっぱり分厚い本に当たりやすくて、洋書だったりする事も多いけど、遠回りのようで早いと思う。

omo: ハズレは引いてるんですか?

A: ハズレは結構引いてるねw

一同: (笑)

A: そこはやっぱり数を読む事でカバーしている、って所はあると思う。

ひげぽん: 「ハズレを引いた」ってのは読み終わった後に気付くんですか? それとも途中で気付いてやめるんですか?

A: 途中で気付くけど、やめずに最後まで読む事が多いですね。途中でやめてもいいんだけど。

ひげぽん: おー、それは熱いな。今、さらっと流れたんですけど、「洋書を読む」という壁がいまここに出てきたんですよ。そこは越えておくと楽ですよね。

omo: そこは洋書ブームが来ている人に聞くのが生々しい声が聴けていいんじゃない?

ひげぽん: 仕事とかで論文を読まなきゃいけない、論文は英語で書かれていて、しかも数式も難しい、ダブルで難しい……みたいな事で苦しんだ時に「まずは洋書の技術書から」みたいな事をやってみて。もう翻訳出ちゃいましたけど、"Working Effectively With Legacy Code" (ASIN:4798116831) を英語で読み始めたら、意外と読めるし、翻訳と違う雰囲気を感じ取れますよね。「翻訳待ち」ってステータスがなくなるのも大きい。

A: 最近は良い本の翻訳が出てないって印象があったので、プログラマは洋書を読まなきゃいけなくなりつつあるんじゃないですかね。"Working Effectively With Legacy Code" (ASIN:0131177052) なんてずっと出てなかったしね。最近日本語版が出た (ASIN:4798116831) けど。あんなもん、それこそ2005年に読むから色々と学ぶ事があるんであって、今あれを読むと……別に学ぶことはあるけど、ちょっとまたあの時代とは事情が変わっているので、コーディングも変わっているし、プロセスも変わっているので。

omo: 人によると思うけどねぇ。

A: そうだけどね。ちゃんと先端を追っていれば、あれは時期を逸している感があって。

omo: いやでも、あれねぇ……読んでると当たり前になってる事が色々あって、「あれ? なんでコレできないの?」って事もあるわけですよ。サブクラス化してエクストラクトすればすれば終わりじゃん、ってところが分かって貰えなかったりすると「おっ」ってのがあるわけですよ。

A: リファクタリングブラウザを使い始めの頃は凄く良い本だと思うんだけど、散々それを使うようになって、それを前提としてその次に進んでいる人には、「まだここにいるのかお前は!」っていうところがあって、やっと日本語訳で出たって言われると、日本語で技術書を読んで一線で働くのは無理じゃないかな、って。

ひげぽん: 一線の定義がなかなか厳しそうだ(笑)。

一同: (笑)

A: 「自分は一線だったか?」と言われると、一線ではなかったと思うけどね。DDDなんて未だに和訳出ないしねぇ。2003年に出て必読書だと思うけど。

omo: あれは多分、翻訳者がつかえてると思うんですよね。

A: 一方でまぁ「読みたい」って本当に思ってる人は少ないのかもしれないね。

omo: いやー、割と引用されてるしさ。"Art of Agile Development" (ASIN:0596527675) って本が日本語になってます (ASIN:4873113954) けど、あれって普通にXPのプラクティスにユビキタスランゲージが入っていて、ユビキタスランゲージって。

A: あの本に出てくるからね。ユビキタスランゲージっていうのは、自然言語に翻訳して専門家と話すという、自然言語ユビキタスランゲージって言われてるものだね。なんか……自分が進歩しただけかもしれないけど、95年とか96年ぐらいは、必読書はもっと翻訳されていた気がするんだけどね。最近は堅い本は翻訳されにくくなって。どんどんと、「英語を読まざるをえない」という度は上がってるかなという気はするね。

ひげぽん: どうせエンジニアって英語のリファレンスを読まなきゃいけなかったりするじゃないですか。その延長で本も気楽に読めるようになったら幅が広がりますよね。

---- 英語に抵抗がある人が慣れていくにはどうすれば良いんでしょうね?

A: 分かんないねぇ。最初に読んだ時は辛かったけどね。最初に読んだ洋書は何だっけ…… "SICP" (ASIN:0262692201) でしたっけ(笑)。あれは最初読んだ時辛かったねぇ、何だこの本、って(笑)。

一同: (笑)

omo: スパルタ系ですねぇ。

A: 「英語版はタダだ」って言うからさぁ。しょうがねぇ、じゃあ英語版読むか、ってプリントアウトして大学時代に読んでてさぁ。何セントかを分けるプログラムとかを、英語が分からないんだかプログラムが分からないんだかよく分かんないなぁ、とかw

omo: 学生の頃は、金銭的動機で英語を読む事はあるよね。OpenGLのRedBook (ASIN:0321552628) 日本語は12000円だけど洋書は5000円だよと。じゃあ読むかと。

A: あー、そういうのはあるよねぇ。英語はタダで配られてるのも多いし、安いってのも多いから。

---- 読みやすい洋書と、読みにくい洋書ってありますよね?

A: すごいキツい類のってのはあるよね。

omo: 技術書ってのは、日本語になるから簡単になる、ってことはないと思うんですよ。

A: 今まで読んだ中で一番難しいのは、"Software Factories" (ASIN:0471202843) だね。

omo: (爆笑)

A: 日本語 (ASIN:489100472X) で読むとどうなのかね。俺、読んだことないけど。

omo: いやー、しんどいですよ日本語でも(笑)。

A: あれは何か「しんどいなぁ」って思った本ナンバーワンだけど。でも、ああいう本は必須の本のひとつだと思うんだけどさぁ。

omo: Software Factories?

A: そう。あれは全部読まなきゃダメでしょう、エンジニアは。何の役にも立たないけどねぇ。

一同: (爆笑)

A: 物事をちゃんと理解することは出来るけれど、ちゃんと理解しても書くコードは変わらないという。そういう類の本なんじゃないかな。

一同: (爆笑)

omo: ホントそうだけどさぁ。

A:SICPが役に立つか?」って言われた時の一瞬の間と同じだよね。

ひげぽん: 悟りは開けますけどね。

A: 役に立つと言いたいが……みたいなw

omo: コンフィデンスを得るんですかね。

A: 例えば "Software Factories" (ASIN:0471202843) をちゃんと読めば、「抽象化」ってものの正体をちゃんと突き詰められるわけで。そこからちゃんと理解している人と、そうじゃない人っていうのは、やっぱりソフトウェアの話をしたり、抽象化の話をしても全然別な事を本当は言っていて、それは本当は大切なことだと思うけど、コードにあまり違いが出ないので。

"SICP" もそういう所はあると思うんだよね。普通にコードを書く時に、C言語でも常識的に綺麗に書くってことが、ただSchemeで綺麗に書かれているだけ、って部分はあるけど、順を追って抽象化の思考みたいなものが書かれていて、そういうのをちゃんと理解していると、C言語でも心の底でそういうのがあって、それがそういう表現になってるのか、ただそういうコードになっているのか、ちょっと違う所があるような気がするので、読んだ方がいい、というけど、新人が今ここにいたとして、全然コードが書けなくて最初に読む本がこれか、と言われると違うなぁと。

ひげぽん: それは違うな(笑)。

omo: どうですか、SICPを読んだ身としては。

ひげぽん: どうですかねぇ。自分は直接の利益としてインタプリタとかコンパイラが書けるようになった、という利益があるんで。

A: あれを見るとSchemeインタプリタとか書くよね。

omo: 恩恵を得ているレアな例なのかもしれない(笑)。

ひげぽん: コンピュータサイエンスの本ですよね、Schemeの本というよりも。

A: そうだね。

---- 海外の大学では最初にあの本を読むという話ですが

A: そういう噂だよねぇ。

ひげぽん: 最近は読まなくなった、って話もありますよね。無駄に難解なんですよ。

---- 読書会をやってる人が多いですよね

A: 読書会はよく見るよね。「SICP読んだぜ!」ってのがいいんですかねぇ。

---- 三人とも読んでますよね

omo: 僕は途中まで。

A: 俺読んだよ。わーい(笑)。

---- 何をもって「読んだ」なんですかね

A: 最後まで読めばいいんじゃない?w

ひげぽん: いや、「ここの章のアレが」って語れないと(笑)。

A: ダメですかw

---- 例題とかやってます?

A: 例題は俺あんまりやってないねぇ。それはひげぽん先生の方が偉いですね。

---- 例題やると違います?

ひげぽん: 違いますね。読み飛ばしたのがもろバレますからね(笑)。

一同: (笑)

ひげぽん: 「全然分かってなかった俺!」みたいな。でも、基本、コンピュータ本の例題はやりませんけどね。

A: アルゴリズムの本だと例題とかやったけどね。

omo: 本の中身を忘れないために、マインドマップを書いてるじゃないですか。あれと例題やるの、どっちが良いと思います?

ひげぽん: それはマインドマップの方が僕は好きですね。見返すとマインドマップを書いて時の感情が思い出せるんですよ。……宗教的になってきましたけど。

一同: (笑)

A: マインドマップの話は宗教的になるんだよね。

ひげぽん: 「マインド」って付くからいけないんですよ。

A: いつもこの話をするとねー、痛い信者みたいになるので俺は最近しなくなったんだけど。

一同: (笑)

---- 痛いところを見せて欲しいですw

A: マインドマップの歴史は長いからね、俺は。大学一年の頃とか。コンピュータ触る前から描いてるので。

---- マインドマップを知る前から、それらしいものを描いてた?

A: いや、トニー・ブザンの "頭がよくなる本" (ASIN:4489005261) は受験生必読の本ですよ(笑)。

ひげぽん:マインドマップ」じゃなくて「頭脳地図」ってことにすると、印象が変わりますね(笑)。

A: マインドマップは良いけど、この会話の趣旨とは外れる気もする。最近コンピュータの本を読んで描いてないけどね。

omo: 本の中身を忘れるんで、忘れないようにしたいなと思って、マインドマップを描いてる人を見ても、なかなか真似できないんですよね、面倒くさくて。

ひげぽん: でも、ある本を読んでマインドマップを描くとすると、本を読んでる時間の方が明らかに長いんで。

omo: そうなの!?

ひげぽん: 最後の何分の一かの工程をマインドマップに注いで。

omo: どういう粒度で描いてるの?

ひげぽん: 章かセクションぐらいですかねぇ。

omo: 章かぁ。やっぱり章ぐらいだよねぇ。なんかマインドマップってレイアウトとかが上手く行かなかったりするじゃないですか。「あれ、こっちに寄っちゃったよ!」とか。

ひげぽん: それは、慣れないうちは下書きマップを描いて、本ちゃんマップに清書するんですよ。

omo: 最近はもうやらないんですか?

ひげぽん: 「頭の中に書いておいて、最後に」みたいな。

omo: (感嘆)

A: 同じ方向に広げるってのは、慣れが必要だよね。同じ方向に広がられるようになるというのは、マインドマップを使いこなしている事になるという。

omo: 持って来てます?

ひげぽん: ありますよ。最近は手抜きが多いですからね。段々自己流になるんですよ。

omo: お、PCだ。写真に撮ってるんですか?

ひげぽん: 写真に撮ってます。最初は気合入れて書くんですけどね。段々適当に。

A: 俺はあんまり時間掛けないねー。

omo: カラー?

ひげぽん: カラーですねぇ。例えばコレですね。これはDDDのServicesのマインドマップ。これぐらいの粒度ですね。あんまり細かく描いても覚えられないんで。

omo: 覚えるの前提なんだ。

A: マインドマップは、描けば割と覚えるけどね。

ひげぽん: それはAさん記憶力がいいんですよw

A: そういう問題じゃないとも思うけど。

ひげぽん: この一番太い枝は覚えますね。細かい部分は、ここを思い出してから何となく「うんうん」唸って思い出すみたいな。

omo: 「何%」とか書いてるじゃないですか、日記に。

ひげぽん: あれは、復習用の単語帳みたいな紙を引いてくると「これを復習しろ」って書いてあるんですよ。その復習しろと書いてあるマインドマップをこれを見ずに書いて、どれくらい一致しているかと。

omo: へぇーっ。ここが復習ワードなんですね。

ひげぽん: 「Servicesって何だっけ?」みたいになって。「どのオブジェクトにも所属しないアレだよ」みたいな所から始まって、「背景はこんな感じ」っていうのを思い出すみたいな。でももうルールを守ってないんです。例えば、絵をもっと描きなさいとか。中心では三色使いなさいとか。色々ルールがあるんですが、段々守らなくなる(笑)。でも色は重要ですね。

omo: 色は重要なんだ。色で覚えてるの?

ひげぽん: 一番重要そうな所は赤くしたりとかするんで。

---- 全部の本でやってるんですか?

ひげぽん:マインドマップを描く」と決めてる本だけやってます。

omo: 描かない本もあるんだ。

ひげぽん: あります、あります。軽く読むような本は描かないですね。"Realtime Rendering" (ASIN:1568814240) とかはやってますね。100円ショップで色ペンを買っておいて。会社と家に置いておいて。理解度を試すのに良いですよね、マインドマップは。「見て思い出せるものは描かない」って基本ですね。

omo: 僕は目次が木になってるだけだからダメなんだろうな。

---- 最初に始めた時は、どんな失敗をしてました?

ひげぽん: 最初は、本の作者の思考の流れに沿って描いてたんですけど……つまり、作者が言いたいことがあって、結論が先に書いてある場合もあるんですよ。「こういう部品がある」とか。「これにはこういう背景があって、こういう失敗があって、こうなりました」みたいな流れがあるんですけど、作者の心の流れは自分では思い出せないので、自分の心の流れに変えて描くと。

omo: へぇー。

ひげぽん: 自分だったら、背景がこうあって、困っている事がコレだったからコレが出てきました、みたいな順番の方が分かりやすいんですよ。

omo: そうやってリレイアウトするんだ。

A: マインドマップを描く本は「ちゃんと復習したいなぁ」って本だよね。さらっと読んで終わり、って本ではあまり描かないな。

omo: (自作マインドマップを見せつつ)これは "詳解TCP/IP" (ASIN:4894713209) かな。

ひげぽん: こんな感じですよね。

A: うん。

omo: 描くと凄く疲れるんだよね。あと、これって出てくる順番なんですよ。出てくる順番に、見ながら描いてるから、多分違うんだよね。見終わった後にバンと描いてます?

ひげぽん: どっちもですね。頭の中に入りきらない量だったら、読みながら描きますし。

A: 大学の講義とかはマインドマップでノート取ってたけど、その時は聞きながら描いてたけどね。終わりまでにどういう形になるのか分からないけど、均衡になるには色々と推測しなきゃいけないんで、理解して先を読みつつ描かなきゃいけないという効果はあるね。

ひげぽん: 一発で書けるのが理想ですよね、手間も考えると。

omo: 復習ってフェーズがないからね……。

---- 復習をするようになった理由は?

ひげぽん: 自分が「記憶力が悪い」と分かっている前提で、せっかく本を読んで自分の引き出しが増えたのに、とある会話で聞き覚えのある言葉が出てきた時に「あれ、なんだっけ?」って事がよくあるので、だったら本当に重要な事は覚えよう、って事で復習フェーズを入れました。

---- 復習方法もマインドマップの本に書いてあるんですか?

ひげぽん: 「いつ復習すべきか」とは書いてありますね。翌日、一週間後、二週間後、一ヵ月後かな。「これは何月何日に復習した、次は何月何日」みたいな感じで紙に書いておいて、箱に放り込んでおきますね。

omo: ちゃんと守られてるんですね。

A: それは偉い。俺はそこまで守ってないねぇ。次の日の復習はやるけど、何となく忘れてくる一週間後にもう一度やるぐらいかな。ぴったりじゃないけど、一ヵ月後ぐらいにも復習はしてる。

omo: 復習するんだ、やっぱり。

A: コンピュータの本は最近は復習しないねぇ。語学とかの方が多いかな。

ひげぽん: 語学は効きそうですね。

A: コンピュータの本は、読めば読むほど自分の知らない量ってのが一冊の中で減っていくんで、「殆ど知っていて、ちょっとだけ知らない」ってなっちゃうので、頑張って復習、って感じじゃなくなってくるんだよね。

ひげぽん: 僕は貯金がないんで覚える時期だと思うんですよ。読むと殆ど知らないことばかりなんで。

A: それは「良い本を読んでいる」ってことだと思うけどね。私も知らない事はいっぱいあるはずだけど、知っているような本を引いてしまってる、という事があるからそうなるのかも。

---- トニー・ブザン著の本から入るのが良いですか?

ひげぽん: 原典なので良いとは思いますけど、最近は商売っ気があるんで(笑)、全部まともに読むのはどうかなぁ、って気がします。

A: いっぱい出してるよね。「頭がよくなる本」(ASIN:448900740X) だけでいいと思うけどねぇ。

ひげぽん: 僕もそう思います。

---- 大学の頃というと、だいぶ昔の本ですよね

A: 新しいのが出てるよ。

ひげぽん: マインドマップは宗教っぽいんで、あんまり広げるのは良くないと思います。「あー、こいつらキモいよ」で終わりますよ。

---- 実際そう言われる事は多いですか?

ひげぽん: 「誤解してた」って言われることはありますね。熱く語ると「あー、そうなんだ」って分かってくれますけど、分かってくれたのか、そろそろ切り上げよう、ってことなのかは(笑)。

omo: カードを使う復習の仕方って、オリジナルですか?

ひげぽん: だと思いますが……どうだろ(笑)。

omo: そろそろ本が書けると思うんですよね。「スーパープログラマのための」……じゃない(笑)、「スーパープログラマによる勉強法」。

ひげぽん: そういうのはちゃんと成果を上げてる人じゃないと (笑)。

A: 成果を上げてない人も書いてるよw 勉強の本ってのは結構あって、どれも似たような結論が出てるよね。

ひげぽん: それは僕も思いました。僕はある時期Aさんに「ひげぽんは勉強の効率が悪いよね」って言われて、「それはもっともだ」と思って、図書館で「勉強の仕方本」をいっぱい借りて読んだんですよ。そうするとやっぱり共通部分が見えてきて。マインドマップも復習もそうですけど。

---- 勉強の仕方を変える前と後で、違うと感じたことは?

ひげぽん: 復習が足りなかったですね。インプットは足掻いてたんでしょうけど。どんどん頭から抜けていって、何も残らず「あの本は読んだよ」って言えるだけ(笑)。

A: 本のチョイスが気になったね。CPUの勉強をしようと思ったら、ヘネパタを最初に読むものだろうと常識的には思うんだけど、違う本をいっぱい読んでたりしてたじゃん。そういうのが何か違ってたのかなぁ、と思ったんだけど。

ひげぽん: いや、純粋に自分は知らなかったし、周りにそういう人もいなかったという。"はじめて読む486" (ASIN:4756102131) とか読んでましたね。あれも良い本ですけどね。でもあれにはパイプラインストールとかは書いてないんで。

A: 初期の「OSを作ろう」スレでは、"Intel Developer's Manual" を読めよ、って言われてスルーしてた記憶があるけどw

ひげぽん: あれはダウンロードして「無理だ」と思ってw

A: "Intel Developer's Manual" って分かりやすくない? 必要最小限のことだけで。

ひげぽん: 今でも厳しいかなw

A: ヘネパタってそんな難しいわけじゃないよね、そんなに。

ひげぽん: そうですね。

A: そういう本もあるんだよね。「分厚いけれど難しくなくて定番な本」と「厳しい本」があるんだよな。

ひげぽん: そういう良い本を選ぶ方法を知りたいですね。今はAさんチョイスをパクってるだけなので。

トニー・ブザン 頭がよくなる本

トニー・ブザン 頭がよくなる本

http://d.hatena.ne.jp/ryocotan/20091231/p3 続きの(2)です

補足

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/ryocotan/20090919/p1
id:natsutan ヘネパタとパタヘネは違うと何度言えば

ご指摘ありがとうございます。申し訳ありません、「これかな?」と適当にASINを貼ってしまいました。念のためリンクは外されて頂きました。ヘネパタとパタヘネがあるんですね。

ネトウヨが民主党支持の親子に話をきいてきた

日本を、あきらめない☆


SAPIO愛読者のネトウヨが、大同人作家クワタさんと、お父様 (元テレビ局勤務) に「民主党を支持する理由」をきいてきました。

---- そもそも、なぜ自民党ではダメなんでしょうか?

クワタ: 自民党がダメ、ってわけじゃないんですよ。多分、ひとりひとりは頑張っていても、抜け出せない状態になっているんじゃないかと。結局、今の政治体制のままで、ひとりひとりがベストの状態を尽くして、今の状態があるわけなんですよ。人間っていうのは食わなきゃ生きていけないから、「自分たちの都合のいいように」といったら言い方が悪いかもしれないけど、結局みんなそういう風に生きてるじゃないですか。その偏った状態でずっと続いてること事態が悪い事なんじゃないかと。みんな「悪い事をやろう」だなんて思ってる人はいなくて、みんな行動を起こす人は、良かれと思ってやってる事ばかりなんです。……。難しいですね(笑)。

---- (笑)

父: ベクトルが合ってるかどうか、という事を言ってるのかな?

クワタ: まぁそんな感じですね……。ベクトルといっても、人によって色んなベクトルがあるけど、一部の人のベクトルだけで政治経済が動かされている状態だと、反対側を向いてる人には都合の悪い世の中になるわけです。結局、良いところと悪いところがあるんですよ、どの党も。で、バランスを取らなきゃいけないなぁ、と思います。

---- 世の中が自民寄りになりすぎている?

クワタ: そうですね。世論はともかくとして、世の中は自民寄りになっていると思いますね。

---- いったん痛い目にあわせないといけないと

クワタ: 簡単に言うとそうなんですけど、多分、それを日記に書いても、その程度のことじゃ納得してくれないと思うんですよ。それを納得されられるような説明というのは、凄く難しいと思うんですよね。実際にネット上で自民を支持している人たちって、「『一回やらせてみよう、替えてみよう』という考えこそが危険だ」という意見が多いじゃないですか。それがまぁ、保守的といえば保守的なんだけど、それを上手く納得させられる材料はなかなか難しいと思うんですよね。考え方そのものの違いですから。

---- 現状を変えなければ、急に悪化する事はないでしょうね

クワタ: 悪くなるにしても、そのペースは穏やかですからね。

---- 民主党にしたら良くなると考えるのは何故でしょうか?

クワタ: 実はですね、民主党が勝たなくてもいいんじゃないかな、と思っています。自民党が仮に勝ったとしても、投票率が大幅に上がれば、それだけで効果があると思います。結局、今の選挙って、支援団体の影響がすごく大きいんですよ。経団連にしろ、某学会にしろ。投票率が上がって、もともと政治に関心のなかった層も関心を持つようになれば、今よりも政治に注目するようになるわけだから、政治家は「次の選挙で落とされるんじゃないか」とビクビクしながら政治を行うことになるはずなんです。それで初めて「国民主権」になるんじゃないかなと思います。

---- 民主党はどれくらい勝ちますか?

クワタ: 民主党が単独でギリギリ過半数を取るぐらいが良いかなと思ってますね。

---- お父様はいかがですか?

父: 非常に穏やかな意見でいいと思う(笑)。いずれにしても、国民の方に目を向けさせないと。今はちょっと、高みから見ているとよく言われますよね。特に麻生になってからそうですよね。特に彼の場合は明らかに出てしまう。いわゆる「上から目線」と批判されるそれです。その前までは……実際にはそうなんですけど(笑)、見えなかったというか、見えにくかったというか。

クワタ:国民主権が良い」というのがどういう事かというと、結局、今までの状態というのは、政治家がどんなヘマをやっても……よほどのヘマをやると追い出されますけど、どんなことをやっても、毎回受かる政治家が同じ、という状態が続いてるわけですよ。それってどういう事かというと、選挙があまり関係ないんですよ。国民が国に対して意見を反映させられるのは選挙しかないんですよ。それなのに、選挙無効状態。つまり、国民不在政治なんですよ。

父: ただね、国民不在政治を行っていたのは誰かというと、国民なんだよ。

クワタ: そうなんですよ。今も国民の間には「政治の話題は飲み会でタブー」みたいな風潮があるんです。それは本当に良くない事だと思うんですよ。例えば、国によっては違う政党支持者同士が飲み会で情報交換をして、お互いの意見を尊重しあうなんて当たり前なんですよ。でも、ネット上で自民党を支持しているような人たちには、そういう気配はサラッサラ見えませんね(笑)。僕は割と、自民党支持者の気持ちも分かりますし、思想的にも保守的な方だと思ってますけど、それと自民支持は違うだろうとは思いますね。

---- 実際、民主党に政権を取ったら日本はどう変わるんでしょうか?

クワタ: 多分、実際には暫くは何も変わらないんじゃないかと思います。

父: そういう意味ではそうでしょう。ぱっと明日から政権が変わったとしても、実際に動く主体というのは政治家ではなくて、今話題になってる官僚だとか、組織、あるいはみんなの考え方が変わらないと、変わらない。

---- 民主党は変えていける?

父: 変えていけるとすれば、それは、促すような事をするしかないね。民主党自身が変えていくというのは、できない。

クワタ: 無理矢理何かを変えようとすると「次の選挙で全滅」ってこともあり得るわけですよ。結局、日本人って変化を嫌うんで、民主党はできるだけ変化させないようにすると思いますね。だから表面的には、政権交代自体には速効的な意味はないと思います。ただ、国民の権限を少しでも強くすることに対して、政権交代が一つのきっかけとして必要なんじゃないかと。

父: 国民の意識が変わらない限り、変わらない。そっちが先でしょうね。最近ようやく自分たちも政治の仕組みも変えられる可能性があるんじゃないかと、そういうのに気が付き始めたのかなと。遅いと言えば遅いです。

クワタ: 僕はちょっとそれには疑問があって。今、民主党支持に傾いているのは、残念ながらみんなそこまで考えてないんじゃないかと。一年前ぐらいからマスコミで「自民党が悪い」って言い続けてるじゃないですか。結局、それに乗せられている人が大多数であって、まだ国民はそこまで考えてないんじゃないか、というのが残念ながら実情なんじゃないかなと。そういう状態で政権交代になっても、今までの自民政権と変わらないんじゃないかと。国民の意識が変わって、自分の意志で民主党に入れて、もしくは自民党に入れて、政権が変わる。それこそに意味があるのであって、「自民党民主党か」というのはさほど意味が無いんじゃないかと思います。

父: ただ今までの選挙を見ると、結局、自分がとこに投票しようと、世の中が変わることはないと、頭から信じ込んでいる人が多い。だから、投票に行かないと。投票率を高めること、それによって結果が変わる。

クワタ: 例えば投票率が上がって、それによって自民党が勝ったとしても、投票率が100%で、自民党がギリギリぐらいで勝ったとしたら、多分自民党は、国民目線でビクビク状態になると思うんですよ。それは政権交代並みの効果があると思うんです。

父: そういうクワタの言い方をするとね、小選挙区制というのは非常に効果があるという見方もできる。小選挙区になれば、非常に政治が不安定になる。これはもう、今までの歴史がそうで、日本は最近ようやく小選挙区制になって、みんながやめたころ、なったんだよね。小選挙区制の弊害っていうのは「極端に変わる」ってことですよね。ほんのちょっと、支持率が数%変わるだけで、あっちいったり、こっちいったり、それが小選挙区制の特徴です。小選挙区制にみんな賛成……したのか分からないけど、それを自民党政権の時にしようとした意味は分かる。それによって、自分達は絶対数を取れると。それはその通りで、それは小泉に一番利用されたと。それによって2/3以上になってしまった。2/3以上の数があれば、何でもできると思い込んじゃった。これが自民党を危うくした。目先だけを考えていた。遠くを見据えて、これでもって、世の中を良くしていくんだというビジョンが示されていない。

---- 政治家というのは、常に目先のことしか考えていませんか?

クワタ: いや、そんなことはないと思いますね。「総合的に考えて一番重要な事を行う」だけであって、例えばその……政治家にとって一番重要なのは、次の選挙で勝つことです。何よりも一番大事なのはそれです。そりゃそうですよ、自分の食い扶持もありますし、自分の周りの人たちの食い扶持もあります。結局、一国一城の主ですから、政治家というのは。だからやっぱり、次の選挙が一番重要なわけですよ。「日本をどうしようか」というのは、二番目なんですよ。それ自体は悪いことじゃないと思うんです。みんなが次の選挙で当選することばかりを考えている、それを最優先にしていると踏まえた上で、支持を決める必要があるんですよ。結局、政治家は個人個人なんですよ。「自民党は××を優先させて、民主党は××を優先させる」とかよく言われてるけど、そんなのは二の次であって……やっぱり、自分の事なんですよ。この選挙が終わったら、すぐに次の選挙のことを考えるんじゃないでしょうか。

---- ネトウヨは「民主党政権になったら恐ろしい事が起きる」と言っているが、実際にはそんなことはないと

クワタ: 殆ど起きないと思います。理由としては「そんなことをしたら次の選挙で落ちるから」です。例えば、ネット上で自民支持の人が言っている、「民主党が政権を取ったら、外国人参政権が云々」という話がありますが、あれも自民党も最近になってようやくマニフェストから消したんですよ。民主党も消しましたけど。

---- 国民が怖いと

クワタ: はい、国民が怖いんです。

---- 「国民がどう思うか」というのはマスコミに操作されていると思います

クワタ: そうですね。あれを見て政治家がどう思うかというと、国民であまり政治に関心のない人は、マスコミの報道を見てうっかり信じちゃうかもしれないと。

父: 他に材料がないからですよ。そういう人たちにとっては。

---- 殆どそういう人ですよね、世の中は

クワタ: 政治の話を他人とするような機会のない人は、そうなりますよ。

---- マスコミの偏向報道民主党を推している感があります

クワタ: なぜマスコミが民主党の応援をしているかというと……これは単なる想像なんですけど、キャスティング・ボートを握りたがってるからだと思いますね。「マスコミの一声で自民を勝たせることも民主を勝たせることも出来る」……そういう影響力を持ちたがってるんじゃないかと。仮に今回、マスコミが自民を勝たせたとしても、あまり効果がないと思うんですよ。「元々勝っていた自民が自然に勝った」という形になるだけで。そうなると、マスコミの影響は皆無ということになります。もし今回、前回のような自民圧勝から、民主圧勝にすることができたら、マスコミが勝ち負けを左右することができるキャスティング・ボートを握る事になって、政界に強い影響力を持つことができるんです。思想的に民主を支持しているわけじゃないんですよ。

---- そんな風に国民がマスコミに乗せられるのは気持ち悪いと思うですが、それでも良いんですか?

クワタ: それは良くないと思います。

---- 現実、乗せられているわけですよね

クワタ: それは嘆かわしいことですよね。

父: それに気が付くということが大事ですよね。

クワタ: 自民が勝っても民主が勝ってもいいんですけど、乗せられて、誰かの意志によってどちらかの党が勝つ、というのは良くないことだと思います。

父: そういう事があるということを国民が知っていれば、そうたやすく乗せられることは無くなります。ただ、マスコミがまことしやかに言うことを、そのまま受け入れれば、そうなります。それは誰であろうと同じです。インターネット時代だってそう。鵜呑みにしてしまえば、乗せられるだけです。

クワタ: 結局、マスコミにしてもインターネットにしても、単なる情報源として利用すべきであって、善悪の判断は自分でするしかないと思うんですよ。

父: そういう意味で、欧米でいってるメディアリテラシーというのは、そういう所に着目している気がする。要は自分で判断しなさい、自分の思ったことは言いなさいと。他のことを言ってる人の聞く耳は持つというのが正しい姿勢かな。ただ、判断は、それを取り入れた上で自分でしなさいと。

クワタ: テレビを見て「自民が悪いんだ」と思って民主支持になる人も、ネットで変なページを見て「民主は悪い奴なんだ」と思う人も、同じなんですよ。

---- 民主党の素晴らしさを教えてください

クワタ: ネット上で自民支持をしているような、「民主党はここが素晴らしいんだ!」というところは、正直なところあまりないです。「国民が力を持つために政権交代が必要だ」と、政治家の立場から言ってる人もいるんですよ。それが小沢一郎なんです。小沢一郎が言ったのは、政治家が何かをするというのではなくて、「投票することによって国民が審判できるような政治体制にするべきだ」って事なんですよね。そういう事を政治家の立場から言っているというのが、小沢一郎を支持する理由です。本来なら、政治家の立場から言うべきことじゃないんですよ。本当は、国民の誰かが言うべきことなんですよ。その事を知るまでは、小沢は嫌いだったんですよね。新進党時代とか。

父: あの外見からね、嫌いな人は結構いるよ(笑)。

---- こんなにマスコミの影響が大きい選挙で良いのでしょうか?

クワタ: 先ず、今回民主が勝った場合にマスコミの影響が大きかったのは仕方ないことだと思うんですよ。でも、先に倒すべきはマスコミじゃないと思うんです。先に今の政治体制を替えて、マスコミはその後ですね。同時には戦えないんで。最初にマスコミを利用して、その次にマスコミとの戦いです。次に政権交代した時に起きるのが、政府の記者クラブが廃止されることなんですよ。実際に小沢が実行に移した時の話ですけど。多分、小沢が失脚しない限りは行われると思うんです。

---- 記者クラブ制度が廃止されるとどうなるのでしょう?

クワタ: 記者クラブ制度が廃止されれば、個人ブロガーとかでも記者会見に入れるんです。今の民主党の記者会見には個人ブロガーも入れるんです。予め申請しておけば、ですけどね。

父: 記者クラブといえばね、官僚支配の為に作った組織。殆どの情報は、記者クラブから出たものしか報道していない。

クワタ: 記者クラブでオフレコと言ったものを報道すると、記者クラブを追い出されますからね。

父: それは今までも何度もある。マスコミ自体も変わらなきゃいけない。マスコミ自体も、自分で考えた記事を出すべきで、いわゆる「垂れ流し」と言われているこの状況は非常に問題なんです。「マスコミが意見を形成している」というところまで行っていない。日本の場合は、ですよ。

クワタ: 特にアメリカに比べると、メディアは随分遅れている気がします。

父: 数だけはすごい。世界一です。何でも量はあるけど。金に対してもそうでしょ。金は出すけど、それがどう使われるのか、そこらへんに目を向けないと。世界からも、日本はそこにだけ期待されてしまう。これは非常に良くない。

クワタ: 結局、国民が変わらないと政治もメディアも変わらない。

父: そういう意味ではね、マスコミといっても、色んな意見を出させてやってるような内容も、若干はある。あるんだけど、早朝とか、みんなが見ていない時間帯、そういう時には結構情報があります。

---- 政権交代後、国民自体が変わらないと、また同じ事が繰り返されると

クワタ: 何も変わらないどころか、悪化していくだけですよ。せめて国民の一割、一千万人でも意識を変えれば、随分変わるんじゃないかな。

---- 国民が政治に関心を持つには、どうすれば良いのでしょう?

クワタ: 例えば、まず「政治の話をすると盛り下がる」とか「飲み会で政治の話しをしちゃいけない」とか、そういう風潮を変えるべきだと思います。身近な人と意見を交換すれば、自分の意見を持つようになるはずです。

父: 日本人の場合、違う意見を持ってる場合に、その人に反感を持っているというように捉えられてしまう。そうじゃないんだ。そこは違いを認識して、それを評価すると。この姿勢が無い。自分自身が非難されたかの如く受け止めてしまう。これが変わらないとダメだと思う。

クワタ: 全否定と全肯定しかないですからね。ネット上では民主を支持するような事を書くだけで、「もっと勉強してください」というレスが付くほどですからね。「こんなことも知らないんですか?つ『民主党の正体』」とか。

---- ネトウヨにも分かりやすくまとめて頂けますか?

クワタ: 結局、視点が違うんですよ。自民を支持してる人は「自民が正義だ」みたいな形で支持しているじゃないですか。自分は「民主が正義」だと思って民主を支持しているわけじゃなくて、「政治体制を変える為に今は民主を支持するべきだ」という段階ではないかと。今の民主への支持は、マスコミの影響が大きいというのは確かで、嘆かわしいことではあるけど、それは政権交代後の問題だろうと。

補足:大同人作家クワタさんによる民主党Q&A

Q.民主党政権になると、永住外国人地方参政権が与えられるという事を懸念している人が多いですが?

私も外国人の参政権付与には反対です。でも、これについては予想ですが(外れたらゴメンナサイw)成立しないのではないかと考えています。党内で強く反対している人がそれなりに多いので、党の分裂リスクを負ってまでこんな法案は通さないのではないかと思います。

政治というのは「思想よりも利を優先する」というのは先ほど言ったとおりです。既に注目している人も多いので、コッソリ通す事は不可能ですし、次の選挙にも影響します。私の記憶が確かならば、民由合併の2004年以降はこの法案を一度も提出していなかったように思います(公明党は提出しまくり)。まぁ、自民党があれだけ勝っても完全好き放題とまでは出来ませんでしたしね。

んでもって民主党マニフェストからこれを一旦外しました。で、自民党は完全反対だと叫ぶ人がいるけど実際には素案まではこの法案が存在していたようです。民主党と同じく外しましたが。>http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090730/elc0907300129000-n1.htm

どちらも単なるタテマエなんだろうけど、利を優先した結果でしょう。他の危険(と思われる)法案についても、無茶はしないのではないでしょうか? 勿論国民がしっかりと監視していくという前提ではありますが。

永住権を持った在日外国人は数十万人しかいないからあまり影響ないってのは楽観的ですかね?w

Q.自民党が頑張っているのに審議拒否を繰り返して足を引っ張ったのは民主党・・・という声も多いようですが?

これは民主党が一つの大きな一枚岩の意思で足を引っ張った、という風に考えると確かに酷い事です。政治家一人一人の利を優先する行動がねじれにねじれて、ねじれ国会が「現在の政局によって発生した」という風に考えています。

まぁ、随分民主党に対して都合の良い解釈でしょうが、私は大東亜戦争に対しても、「当時の世界情勢により発生した」と考えるタイプの人間なので。これは判り辛いかな?

Q.高速道路無料化は財源が示されてないという声が多いようですが?

確かに示されていませんね。これは以前に小沢が言っていた高速道路利権の撤廃を目的と考えるとしっくり来ます。

無料化の財源はいうまでもなく、高速道路関係で働いている職員の人件費です。高速道路で料金を徴収する仕組みを維持するだけでもかなりの金額がかかっています。ETCやサービスエリアも利権の宝庫です。

渋滞が増えることを懸念する人も多いですが、地方では料金所以外で渋滞は発生しないため、渋滞は減ると思います。首都高速のような場所では料金制度を残すようですし、こちらはあまり変わらないかと思います。

「上記のようなやり方で、財源は充分に足りているのか?」という疑問もあります。私も財源が足りているのかは非常に疑問です。ですが、自民案の料金値引きや既に行っているETC割引は「これまでと同じ経費を維持しつつ、料金だけを下げる」というものであり、こちらにこそ財源を示してもらう必要があります。もしも示す事ができたら、これまでの高速道路料金はぼったくりだったという事が証明されます。民主案は高速道路のあり方そのものを変えるものなので、(足りないかもしれないですがw)財源を既に示しています。

よく、「民主党自動車税を上げるつもりだ」と言う人がいますが、あれは6年前の管直人が上記のような事まで考えていなかったのでしょう。(記事は民由合併前の2003年です)>http://www.47news.jp/CN/200306/CN2003062201000335.html

小沢の考えていた道路利権の縮小と、民主党の高速道路無料化の方向性が一致した上での状態が今の高速道路無料化であると考えています。

Q.鳩山由紀夫は「日本列島は日本人だけの所有物じゃないんですから」と言ったそうですが?

この発言は好ましくありませんね。何が駄目かというと、内容についてではありません。

この発言の内容自体は「中国だって中国人だけのものじゃないし、アメリカもアメリカ人だけのものではない」という、単なるグローバリストとしての発言に過ぎないと思います。でもいけないのは「自分の考えこそが正しい」という前提の上の言葉だという事です。

私は保守的な人間なので、この発言内容自体にも賛同できませんがグローバリストとしての彼の意見は尊重したいと思います。しかし、「〜じゃないんですから」と自分の意見こそが正義だと押し付ける姿勢はいただけません。正義の押し付けは議論の封じ込めに繋がります。この正義の押しつけこそが、(内容は180度違うとはいえ)自民党支持者の間に広がる感覚そのものなのではないでしょうか?

http://kuwatan.jp/ (靖国参拝大好きの極右人間で大東亜戦争マニア、クワタ先生のページはこちら!

プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く

プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く

同人作家がルームシェアを長続きさせる秘訣

2003年から今に至るまで、ルームシェアを続けている同人作家べたにゃさんと、現在の同居人、大同人作家クワタさんに、ルームシェアを長続きさせる秘訣を聞いてきました。

---- ルームシェアを始めたきっかけを教えてください

べたにゃ: 最初は普通に一人暮らしをしようと思っていたら、某氏 (旧同居人) が「ルームシェアしない?」って言うから、二つ返事で「いいよ」って。

---- その方とは面識があったんですか?

べたにゃ: いいや、あんまり(笑)。チャットでは話してたけど。あんまり会ってはいなかった。

---- この部屋はどうやって決めたんですか?

べたにゃ: チャットで話して決めたんじゃなかったかな。ネットで適当に見てて、いいとこないかなぁって。

---- 家賃は幾らですか?

べたにゃ: 11万。10万幾らに、管理費が一万幾ら。12万までは行かなかったな。

---- ルームシェアへのモチベーションは何だったんでしょう?

べたにゃ: 「広いところを借りたかった」というのがあったかな。それだけ。

---- 家賃は折半ですか?

べたにゃ: 旧同居人と居た時は、俺の方が多く払ってたよ。俺の方が占有面積が多いから、っていう理由で。本棚とか結構でかいし。今は折半ですけどね(笑)。

クワタ: そうだったのか!

べたにゃ: まぁ一万円も変わらないけどね。

---- 名義はどうなってるんでしょう?

べたにゃ: 書面上は「自分ひとりで借りてる」って事になってる。ルームシェアをする、って事は大家に話しは通してるけど、契約上は俺だけが借りてる、ってことにしている。そうしないと責任の関係で面倒くさいらしい。「実際に一人で払う能力がある」ってのが条件みたい。二人で借りるって契約だと、連帯保証人を複数つけなきゃいけなかったり、面倒臭いらしい。

---- 同居人からは、毎月お金を手渡しとかで徴収してるんですか?

べたにゃ: 半年ごとにまとめて振込みとか、そんな感じ。

---- ルームシェアを始めてから気をつけた事はありますか?

べたにゃ: 「期待しない」ってこと。「ゴミを捨ててくれる」とか期待をしない。「掃除してくれる」のを期待しない。

---- 最初は期待してたんですか?

べたにゃ: 期待してたねー。最初は何回か注意したんだけど、全くやってくれないから諦めた。自分もやらない、って事になるとどんどん汚くなるので、我慢できなくなる。

クワタ: チキンレースなんですよ。部屋を見れば、どっちが汚いのを我慢できるか分かりますよ。

---- 期待しないことで、口論みたいな事になるのは避けられたと

べたにゃ: いやー、口論になりかけた事はあったよ。これは期待しちゃうと、この話(ルームシェア)が無かった事になるな、と思ってやめた。「じゃあ出ていくよ」って話になると思うから。

---- 「家事の分担表」みたいな事はしなかったんですか?

べたにゃ: やっても絶対守んないでしょ (笑)。ギスギスの元ですよ、そんなもの。どっちかが折れないと無理じゃないですか。

---- どちらも素晴らしい人格者だった場合はどうなんでしょうね

べたにゃ: そういう人はルームシェアしないんじゃないですか。

---- ルームシェアする人って、どういう人なんでしょうね

べたにゃ: お金がなくて、つまはじき者。

一同: (笑)

べたにゃ: だって、そんな人格者だったら今頃結婚してるし。

クワタ: ちゃんと家事とかマメにできるような人だったら、結婚してますよ。

---- 同居人とは頻繁に喋るものですか?

べたにゃ: 前同居人とは一ヶ月話さない、とかザラでしたね。チャットで喋ってる方が、明らかに長かったし。

---- 最近はギークハウスなんていう、プログラマルームシェアをしている話を聞きます

べたにゃ: ギスギスしてるんじゃないですかね、それは。コンピュータとかやってる人って、譲れないところとか多そうだし。そういうのがいっぱいあると、きっとギスギスしてますよ。ルームシェアは大抵上手く行かないもんですよ。

---- 美味しんぼで、山岡士郎も言ってましたね

クワタ: そうなんですよね。(栗田さんと) 結婚する時に(山岡が)言ってましたよね、別居しよう、って(笑)。別居して時々一緒にゴハンを食べるぐらいにしないか、って。で、栗田さんの親父に「君の理論は子供だ」って。

一同: (笑)

クワタ: あれを見た時に、最初に思い出したのが、id:ryocotanの事なんですよ。id:ryocotanは絶対こうだなと。誰かと一緒に暮らそうとした時点で、ギスギス確定。この人が将来結婚したらどうするんだろうと不安に思いましたね。あの人、結婚したい結婚したい言ってるけど、結婚してどうするんだろう。同居できるのかなと。

---- 家族と暮らすのとは違うんですね

べたにゃ: だって他人だもん。

---- クワタさんは、家族との仲はどうでしたか?

クワタ: 母親はまぁ……うるさい母親だなぁって思っていて。父親は基本的に生活には干渉してこないタイプで。いつも考えてるか何かでぼーっとしてる(笑)。しかも、人のことよりも、自分が勉強する事の方が大事なんですよ。いつも部屋にこもってます。でも流石に、大学留年する度には言われましたけどね、「学費と同じお金を稼ぐのが、どれだけ大変なことか」って。二回留年しました。

べたにゃ: 六年目の放課後!

---- 前同居人が部屋を離れることになって、一人暮らしに戻る予定だったんですか?

べたにゃ: まぁ、誰もいなきゃ戻るしかなかったですね。この部屋は流石に維持できないので、他の部屋を探し始めていましたね。

---- 現同居人、クワタさんとの縁を教えてください

クワタ: そもそも、話した事もなかったし(笑)。会った事も二回ぐらいしか無かったですね。前の人ととべたにゃ先生は多少は面識あったと思うけど、自分は殆どなかったです。

---- クワタさんは実家暮らしだったんですよね。家を出たいという気持ちがあった?

クワタ: 三人兄弟なんですけど。兄と姉が両方出ていってから、風当たりが強くなってきて(笑)。きっついですよ。

---- 部屋でゆっくり出来なかった、という話も聞きました

クワタ: 漫画を大量に買い込んでいて。部屋に漫画のダンボールをガンガン積んでたんですけど……100冊ぐらい入ったのが二十箱ぐらいですかね。「これ、どうにか処分して」って言われてました。他には、夜中にネットをやってると「一体いつ寝るんだ」とか言われて。

---- 誰がですか?

親父が突然部屋に入ってくるんですよ。「夜中起きてると早死にするぞ」って。親父はテレビ局に勤めてたんですけど、徹夜業務の人は早死にしてたらしいです。テレビ局は全体的に、夜勤の人は六十代で死ぬって言ってました。

---- 勤めてる間に死ぬ?

クワタ: そういう人も時々いるけど、大抵は定年退職をして、数年後に死ぬって。テレビ局って24時間働いてなきゃいけないですからね。昼寝て、夜勤務してる人は、早死にすると。

---- 「家を出る」と言った時の家族の反応は?

クワタ: あぁ、そうなの、ぐらいで。兄貴も姉貴も家を出た後でしたからね。

---- 話を戻しましょう(笑)

クワタ: チャットに入ったら突然「同居人キター!」って言われて(笑)。前の人がルームシェアをやめるので、次にどうかってことになっていて、「あぁ、そうなんだ」と成り行きで話が進んでいって。

---- クワタさんは家賃はどうやって払ってるんですか?

クワタ: 最初にまとめて何ヶ月分か払って……その後は一年四ヶ月後ぐらいに払いました(笑)。

一同:(笑)

---- 滞納してる前提で聞いちゃいました、すみませんw

クワタ: いえいえw 聞かれるんじゃないかな、と思って先手を打っておきました。まぁ、これからまたレジェンドを始めますけど。

一同:(笑)

べたにゃ: 勘弁してくださいよ

---- 滞納されてる方としての気持ちはどうなんですか?

べたにゃ: 別に……金があるうちは、後で払ってくれるなら滞納してもいいかなって。今は金がないから。

クワタ: でもね、滞納することによって、普段なかなか貯金しないべたにゃ先生に貯金をさせることができるんです。自分としては「良いことをしてるなぁ」と思ってます。

---- 二人で暮らしていて、気をつけてることってありますか?

二人: ないんじゃない?

クワタ: べたにゃ先生が人格者だから、適当でいいんですよ。

べたにゃ: こっちも適当にやってますよ。「期待しない」「干渉しない」は基本でしょう。

---- ルールづくりみたいなことはやってないと

べたにゃ: そんなのやったら絶対ダメになるよ。

クワタ: 逆の人もいるでしょうね。ルールづくりがないと、ギスギスするって。

べたにゃ: それはルールを守れる人の意見で、ルールを守れない人から見たらそれは地獄だね。

クワタ: 一週間ぐらい守るのは良いけど、一年とかになるとね。

---- ルームシェア生活は楽しいですか?

べたにゃ: まぁ楽しいんじゃない?

クワタ: 楽しいんじゃないんですか?

べたにゃ: 常に話す相手がいる、ってのは重要ですよ。一人暮らしだと、喋り方を忘れることもあるし。

クワタ: ルームシェアをしたら結婚する必要は無いんじゃないかと(笑)。一人暮らしをした事が無いから分からないですが、「全く拘束がなくなる」ってのもヤバいのかなぁと。これくらいが丁度良い気がします。

---- この部屋「らき☆すた御殿」って呼ばれているらしいですね

クワタ: 引っ越してきた時にたまたま、かがみんのタペストリーがあったから、窓になんとなく貼り付けただけです。

---- 大家から文句が来たこととかって、ないですか?

べたにゃ: 一応、今のところは無い。俺は心配してたけど。

クワタ: そうなの? 全く心配してませんでした (笑)。

---- 風邪で寝込んだりして、看病をしたこととかってないですか?

べたにゃ: ないね。昔、コンビニ弁当だった時はよく風邪引いたけど。最近は鍋をやってるからね。いやー、鍋は良いよ。バランス栄養食ですよ。

クワタ: 野菜いっぱい取れますからね。「この栄養が足りないな」って思ったら、それを突っ込めば良いだけですから。「ちょっと最近野菜食ってないな」とか「肉食ってないな」とか。野菜は多く取りすぎても大丈夫ですから。

---- 鍋の失敗談ってあります?

二人: いっぱいあるw 「サメを入れてはいけない」

クワタ: えーとですね、鍋にサメの肉を入れるとですね、サメの中のアンモニア分が鍋に溶け出すんです。鍋全体がアンモニア臭くなるんですよ。

---- 美味しかったですか?

クワタ: クソ不味くて捨てました(笑)。「サメを鍋に入れてはいけない」。凄く安かったんですよ。六切れ50円とかで。毛鹿鮫って言うんですけど。「これは安い!もしこれでサメ鍋が美味かったら、毎回サメ鍋だ!」って思って。いかに鍋で安く済ませるか、に凝ってた時期だったんですが……高くつきましたね。

---- 二人は同人活動をされてるという事ですが、同人の話はよくされるんですか?

べたにゃ: しますね。主にカントクの話を。カントクがいかに素晴らしいか、って話。

クワタ: 最初はカントク憎しで話してたんです。若いクセに売れてやがって、って。でも気付いたらいかにカントクが素晴らしいかって話になってて。カントクすげぇんじゃねって。

べたにゃ: 実は同人誌の値付けとか、良心的なんじゃないかとか。

クワタ: あとは、仕事の事を考えて活動してるんだろうなぁ、とか見えてきて。

べたにゃ: 真面目な人だな、って。サイトとか、同人誌から見てもうかがい知れる。

クワタ: 殆どの人からは、ただ「上手い」としか思われてないんじゃないでしょうか。カントクの凄さは、同人活動を実際にやってみないとわからないかもしれないです。

---「同人活動を実際にやってみないとわからない」というのは?

クワタ: 例えば、同人活動をしていると「大手ジャンル (以前の「らき☆すた」など) ゴロ」とか、世間から批判を受けるわけですよ。あれって、やるの相当難しいと思うんですよ。人気があるだけで好きでもない作品なんて、簡単には描けないんです。好きな作品だからこそ描ける、ってあると思うんですよ。ジャンルゴロだなんて、卓越した能力がないと、そんなことできないんですよ。これは、実際に同人活動をやってみないと分からないでしょうね。

---- ジャンルゴロにはなかなか成りえないと

クワタ: 成りえないでしょうね。

べたにゃ: たとえ好きなジャンルでも、同人誌一冊書き上げるエネルギーって相当なもんだから。今は作れないし (笑)。

---- べたにゃさんが今ハマってる作品ってないんですか?

べたにゃ: 東方!東方最高!

クワタ: そんな時期もありましたね。

べたにゃ: だんだんZUN絵が可愛く見えてくる。

---- 東方の素晴らしさって何なんでしょうか?

クワタ: ゲーム的な素晴らしさなんですけど、製作者の作品に対するコメントが凄いと思いました。普通、ゲーム製作者って、自分が作ったゲームは良く知ってるわけで、楽勝なはずなんですよ。東方って、理不尽なほどの難しさはないんですよね。作者は、消費者目線で「難しい」「難しくない」って言えてるんですよ。「消費者がどれくらいの難易度として感じられるか」を把握して作っている。そういう、ゲームバランス的な要素が素晴らしいです。

---- 製作者は本当に把握できるものなんでしょうか?

クワタ: 難しいとは思います。でも、そこを把握できるかどうかが、プロとアマチュアの違いなんじゃないでしょうか。素人が作ると、劇ムズになっちゃいますからね。同人ソフト、特にシューティングなんて殆どそうなんじゃないでしょうか。ちょっとばかりやり込んでも、先に進める気がしない……そんな感じ。東方は、自分が上手くなったとちゃんと錯覚できるんですよ。

べたにゃ: 俺はないけどね(笑)。でもまぁ、ゲームバランスは絶妙だよ。相当そこに時間をかけてると思う。

---- 一番難しいシリーズって何なんですか?

クワタ: 文花帖です。

べたにゃ: あれは無理だ。

---- 本人も難しいと思って作っている?

クワタ: 恐らく。それなりの時間が掛かります、とか書いてますし。シリーズによっては、全ての難度をクリアしなきゃいけない、ってわけじゃないんですよ。ネタで入れたようなものもあります。東方文花帖自体に、難易度設定がないんです。あれ自体、ネタゲーなんじゃないんですかね……。

べたにゃ: 内輪向けというか。今までやりたかったけど、やれなかったことを実現したゲームじゃないかと。

---- べたにゃさんにとって、東方とは何なんでしょうか?

べたにゃ: 無職のお友達、ですね。

一年以内にコミケで同人誌を1000冊売れるようになる方法

同人サークル『カラーひよこ愛好会』で活躍されているクワタさんに、同人誌を沢山売るコツを聞いてきました。

http://kuwatan.jp/ (カラーひよこ愛好会

---- 同人活動を始めたのはいつ頃からですか?

5年ぐらい前にちょっとだけやったんですが、継続して始めるようになったのは、1年ぐらい前からです。

---- 昔はどんな同人誌を?

オリジナルしか描いてなかったですね。魔女っ子が女の子を取り合うような話。

---- 売れ行きはどうでしたか?

コミケに出したんですが、最悪でした。知り合いにあげたモノを含めて、十部ほど。余ったのは仕方ないので大学の漫研の後輩にあげました。今でもカントクに会うと、その時の言われるので、あげるんじゃなかったと後悔してます。

---- どれくらいその状態で続けたんですか?

一回出した後に、次の次のコミケにもう一回受かったんですが (【注】コミケはサークル参加で落とされる事があります)、仕事が忙しくて、何も出せませんでした。その時は仕方ないので、昔描いた本をカバンにちょっとだけ持って行きました。会場で誰も手に取りませんでしたが。創作少年で参加しました。

---- それでやめてしまったという事ですが、何故続けなかったんですか?

「先行き無いな」と思ったので。

---- そこでやめて、それから五年間は何をしていたんですか?

大学の先輩がサークルを作ったので、それに参加してました。一冊作るだけのエネルギーがなかったので、個人誌を出すような事はなかったです。実はその間もサークル活動をしたい欲はあったんだけど、何も本が出せなくてイベントを欠席するという事態が続いてしまったので、同人活動を自重するようになりました。

---- そして最近ようやく活動を始めたということですが、きっかけは?

たまたまウェブ用に描いた『らき☆すた』漫画が、ニュースサイトに取り上げられたりと、いつもより好評だったのがきっかけ。ウェブ拍手で感想をくれる人もいました。ゲストで描いた漫画の感想をくれた人までいた。それで本気で始めてみようかなと思うように。

---- ジャンルは何で始めましたか?

らき☆すた、です。

---- らき☆すたはいつからファンだったんですか?

原作の一巻が出た頃から好きでした。

---- コミケに向けて描こうと思ったんですか?

先ずは、らき☆すたオンリーイベント。ウェブで発表してた漫画と、書き下ろしが半々ぐらいの本を。

---- どれくらい刷ったんですか?

1000部です。

---- 1000部ですか!? いきなり1000部も刷ろうと思ったきっかけは?

同居人に、「何部ぐらいがいいですかね?」と訊いたら、「最初は300部ぐらいじゃないの?」と言われたのがきっかけです。

---- 300部と言われて、何で1000部に?(笑)

「じゃあ1000刷ろう」と……何となくです(笑)。本気半分、遊び半分ぐらいの気持ちで。お金が掛かるということよりも、在庫の置き場所をどうしよう、というのが心配でしたね。

---- 本を編集している時に心がけたことってありますか?

精一杯仕上げること。本自体には、特に気をつかった点はありません。

---- で、オンリーイベントに出たわけですね

えぇ。300部搬入して、100部売れました。

---- 想像通りの売り上げでしたか?

結構売れたな、と思いました。その前が10部だったので(笑)。

---- 売れた理由は分析しましたか?

他の自分が買った同人誌との比較はしました。「全部漫画よりも、絵を混ぜた方がいいんじゃないか」とか。

---- 絵が混ざってると何が良いんですか?

『漫画だけだと疲れる』ってことですね。買った後の満足度としては、漫画が沢山あった方がいいとは思います。だけど、手にとって買ってもらうときは、絵が混ざってると、『次のページをめくってくれる』と思うんですよ。熟読するような人って、あまり買ってくれないんですよね。

絵を混ぜたのも、元々は『手を抜くため』だったんですよ。絵を載せてる漫画は、ウェブに載せていた4コマで、「後日談」みたいな感じで、5コマ目としてイラストを追加しています。ウェブに載せてからしばらく経つと、もわもわと描きたくなってくるんですよね、続きを。

---- そういう形で同人イベントを終えて、どんな感想を持ちましたか?

「案外行けるな」と。同人イベントって、出ても全然売れないという印象しかなかったので。

---- 何でそんなに売れたんでしょう?

「表紙に漫画があったから」じゃないでしょうか。だから手に取ってくれたんだと思います。

---- 表紙に漫画が無い本も出されてますよね。違いはありますか?

表紙に漫画がある本の方が反応がいいですね。

---- 二回目のイベントは?

一ヵ月後のコミケですね。最初は新刊を出す予定はなかったんですが、たまたま同居人コミケに向けて一ヶ月で本を出そうとしていたので、自分も出そうかなと。

---- 同居人の方は、やる気にさせてくれる人なんですね。

そうでしたね (「過去形!?」<同居人が叫ぶ)。

---- しかし二冊目は薄いですねw

突発本みたいなものですからね。薄くても、新しい本が出せることで、イベントが楽しみになりますから良かったです。

---- 新刊と既刊、どれくらい搬入しましたか?

新刊400部、既刊を300部持って行きました。

---- どれだけ売れましたか?

搬入した分は全部売れました。

---- サークルを再始動から一ヶ月で700部売れるサークルになったと

たまたま売れただけだと思うんですけど(笑

---- 何か思うことはありましたか?

薄くても、描いた方としては満足できるかな、と。

---- 値段は幾らでしたか?

薄い方は200円、前の本は300円でした。

---- 安いですよね

普通は、もう少し厚くして500円とかだと思います。『ねこま屋。』さんってサークルがあって、そのサークルが出している本が、12ページで200円という価格設定で、あのサークルが売れてる要因の一つに『安いから』というのがあると思ったんです。消費者視点ですね。その値段のつけ方なら、間違いないだろう、そう思ったんです。

---- 薄くても200円なら満足感を得てもらえると

満足感というか、「お試し」で買おうかな、と思うんじゃないかなと。

---- そして三冊目ですね。今度の本は、表紙に4コマがありませんね。

作った時に、前の本の在庫があったので、同じような本ばかり並べると良くないなと思って。

---- 4コマが無くなったとこで、売り上げはどうでしたか?

前の本よりは売れなかったですね。

---- 中身が変わらなかったのに売れなかったと?

中身が原因だと思います(笑)。広げてみれば分かると思いますが、ページ数の割に、漫画の数が少ないんです。描いてる期間が短かったので……。

---- 二冊目からどれくらい経って描いた本ですか?

5ヶ月ぐらいですね。

---- それだけ時間があって漫画が描けないって、どういうことですか?

ひどい!(笑)ダルくなってしまって……最初は早めに書き始めようと思ったんだけど、気付いたらあと二週間で締め切り、みたいな事になってしまった。

---- この本はどのイベントに?

5月にあった、『京アニ オンリーイベント』ですね。この時は200部搬入しました。刷ったのは1000部です。

---- 売れ行きはどうでしたか?

まったりとしてましたね……

---- そして4冊目は?

これ (マジカル☆カガミン) ですね。3冊目まで同じような本でマンネリになっていて、描いている時点で飽きてしまった、というのがあったので、「好きなのを描いてみよう」と思いました。『魔法少女もの』は話を考えるのが楽しいんです。

---- この本は何というイベントに出したんですか?

『ぷにけっと』ですね。今年の六月です。元々は本を出す気はなかったんですが、五月のイベントの時に、「来月のイベントに新刊なかったらダメですよ」とあるサークルの人に言われて。こういうネタにしたのは、以前、サークルで隣になった人が、らき☆すたのキャラなんだけど戦隊モノって本を描いてたんですよ。それで、「あ、こんな本もありなのか」と思って、らき☆すた魔法少女モノを描く事になりました。

---- この本は何部刷ったんですか?

1300部ですね。300冊増えたのは、丁度二冊目の本の在庫が切れかけてたから、ですね。1500部じゃ多すぎるかなと(笑)。

---- それで何部搬入したんですか?

200部です。でも、30部も売れなかったですね……。

---- 何で売れなかったんでしょう? 周りのサークルはどうでしたか?

周りのサークルも売れてなかったですね。

---- 『ぷにけっと』というのは、基本的に売れないイベントなんですか?

分かりませんが、「上手い人しか出てない」というのもありそうですね。参加者の目が厳しいかもしれません。この本は、「描いてる時が一番楽しかった」ですね(笑)。「タダで持っていってください」ぐらいの気持ちです(笑)。

---- そういえば、クワタさんは本を同人ショップに卸してるということですが

皆に認知されている大手サークルでもない限り、それほど多くの人がわざわざイベントで訪れてくれるような事はありません。私が見る限り、殆どの人が偶然通りすがった人達です。だから書店に卸す事によって、イベントで縁がなかった人達の目にも触れる機会が増えるのではないかと考えました。

---- 簡単に卸してもらえるものなんですか?審査とかはあるんですか?

まずは見本誌や作りかけの原稿データを送ります。各書店のサイトを見れば手順が出ています。そこで審査が入るわけですが、書店に卸す量は、イベントに比べるとそれほど多くはないですね。大手サークルとか、凄く上手い人とかだと書店の方が多くなったりもするのでしょうが。

---- 卸してもらいやすいショップ・もらいにくいショップってあるものですか?

最初の本は、世間では『審査が甘い』と評判の『とらのあな』でも、委託を断られました。恐らく実績がなかったからでしょう。2冊目以降は卸してもらっていますが、100部を越えたことは一回しかないです。

メロンブックス』は、とても厳しいと思います。全ての本を送っていますが、これまで全て断られています。『ホワイトキャンバス』は、一回の数が 20〜60部 とマチマチですが、売り切れた場合の再搬入に積極的なので最初の本から利用させてもらっています。

---- どれくらい売れるものなんですか?

とらのあなでは100部くらいです。どうやら店頭分はすぐに無くなって、通販分がその後もずっと残り続けてしまいます。時折、通販分が一気に無くなることがありますが、店頭に回したためなのでしょう。

まんだらけやMAGMAGにも50部ぐらい卸していますが、未だに最初の本が半分近く売れ残っています。置いてくださっている店舗には申し訳ない気持ちとありがたい気持ちでいっぱいです。

---- 店のマージンってどれくらいなんでしょう?

店頭価格の約3割が書店マージンです。店頭で税込150円の本があった場合、50円がマージンで100円が卸値になります。このマージンは殆どの店が足並みを揃えているようです。ダンロード販売だともっとマージンが高いようです。利用してませんが。

---- 売れ残るとどうなるんですか?

書店によっては戻ってきます。今朝も『とらのあな』から売れ残った 『マジカル☆カガミン』が戻ってきました。殆どの店が「3ヶ月で戻す」としていますが、これまで戻ってきたのは、とらのあなとLLパレスだけですね。

---- 卸してよかったと思うことは?

時々、自分の描いた本の題名で検索するんですが、「どこどこの店で×××を買った」みたいなブログ記事当を見たときに、「イベントだけだったらこの人の手には回らなかっただろうな」と思います。

---- そして五冊目『弄メッコール』ですか、今年の夏コミですね。これは何冊刷ったんですか?

1300部です。

---- 前回の本は売れなくて、弱気にはならなかったんですか?

なりました。でも、一旦減らすと、どんどん減らしていく事になりそうで。攻めの姿勢で。

---- どういう本にしたいと思って描きましたか?

ひとつは「初心に戻って描こうかな」と思いました。編集を頑張ろうとも。めくったときに、どういう順番になると良いかなとか。あとは、上下に「カントクライン」を入れたりと。

---- カントクラインって何ですか?

「カントク」というのは超大手サークルの人で、ページの上下に、本の名前とかが描いてあるラインを入れることをカントクラインと呼んでます。昔、カントクが編集していた部誌を読んで、「あ、一味違うな」と思ったのがきっかけです。

---- カントクさんを尊敬してるんですか?

いえ、あんまり……。あ、でも大好きですよ。「大好き」と「尊敬」は別物です。

---- 何部搬入しましたか?

新刊が600部で、既刊が1200部ですね。全部で1800部です。

---- そんなに沢山、お誕生日席に入るんですか?

一応収まり切りました。でもきっと、周りのサークルに迷惑を掛けてしまったと思います。

---- ブースを作る上での工夫ってありますか?

ポスターを貼ると「ここは売れてるサークルなんじゃないか?」と、一般参加者が勘違いしてくれると思っています。

---- ポスターってどう作るんですか?

印刷所に頼む時に、「表紙のA1ポスターをお願いします」と言えば作ってくれます。3000円ぐらい掛かりますが。

---- ポスターは、ブースにどう置いておくものなんですか?

べたにゃ先生(同居人)が作った、吊るすための器具を持っていきます。2chなんかを見ると、クイックルワイパーの伸縮機能を利用しているらしいです。

---- 夏コミの参加日は?

二日目の「漫画」です。

---- 売り上げはどうでしたか?

恐らく、自分の実力以上に売れたと思います。一冊あたりの売れ行きは、冬コミの方が多かったんじゃないかなと。全部あわせて、1100部売れました。

---- 1100部だと、お客さんはどれくらいのペースで買っていくんですか?

午後一時ぐらいまでは、常に人はいるような感じですね。時々、列ができて、誰もいなくなる事も時々あるけど、それも長くて2〜3分ですね。

---- 手に取った人の反応って、どんな感じなんでしょうか?

「ちょっと広げて買っていく」という人がそれなりに。熟読してる人に限って、あまり買わないですね。

---- それだけのペースで売っていると、どの作業が一番疲れますか?

本を渡すときに、一番上のを取ると失礼じゃないですか。だから一つ下の本を抜くんですが、それが一番疲れます(笑)。お釣りの計算なんかは、大変ではないですね。

---- サークル初めて一年で、1000部売れるサークルになったと

たまたまですよ、たまたま(笑)。

---- もっと上手いのに、1000部売れないサークルの人もいるわけですよね

いっぱいいますよね(笑)。上手いのに売れない人は、『自虐的』になってるのかもしれませんね。「自分なんかが」とか。もしくは、「下手なのに売れてる人」に対して、嫌悪的な考えを持っているのかも。「下手なくせに、いきがりやがって」みたいな。

そういう人に対しては特に何もありませんが、ただ、自分の時は気をつけようとは思います。自分は昔から『自重しちゃう癖』があるんですよね。家の中でも末っ子だったので、常に、「自分は下だ下だ」と自重する癖があったんです。学校生活でもそうだったんですよね。同級生に対しても、常に遠慮して遠慮して……って。そしたら、良い事なんて何一つなかったんです。

---- いつそれに気付いたんですか?

うちの姉貴が正反対だったんです。その姉の影響ですね。

---- ずっと姉みたいになりたかった?

そうですね。姉は昔から「アメリカで働きたい」と言っていて、今はニューヨークで働いてます。

---- 中学、高校、大学と自虐的に生きてきて、いつからそうやって前向きに生きていこうと思うようになったんですか?

実は、大学に入ってすぐにホームページを作って、そっちでは、現実とは正反対の感じのことをやってたんですよ。最初は、とあるゲーム会社を叩くページを作ってました。

---- とあるゲーム会社というと?

今はなくなっちゃったんですけど……合併した企業ですね。

---- なぜそんな叩くようなページを作ってたんですか?

自分の好きなゲームがあって、何でこんな面白いゲームが全然売れなくて、そのメーカーのつまんないゲームが何十倍も売れてるんだと。

---- 好きだったゲームは?

セガサターンの「シルエットミラージュ」ですね。あとは……忘れちゃいました、いっぱいあったんですが。

当時、読んでいたサークルの同人誌の後書きが、物凄い勢いのエヴァ叩きだったんです。で、それを見て感銘して、「よし、スクウェア叩きをやろう」と思ったんです。

---- そのメーカーを叩いて、良い事はありましたか?

ネットで友達が出来た、というのは大きいですね。

---- 良いことばかりだったと

いえ、退学になりそうになりました(笑)。人づてで聞いた話なんですが、スクウェアの法務局の人が学校に電話したら、「彼は元々、授業にも全然出てなかったので退学を考慮していたんです。すぐ退学させます。」と返答があって、「そこまでしなくていいです!」と焦ったらしいです。

---- 脱線しすぎましたw クワタさんとしては、「好きな漫画を描く」のと「売れるジャンルで描く」、どちらが良いと思いますか?

基本的には、好きな漫画を描いていった方がいいと思います。

---- 売れなさそうなジャンルが好きだった場合、どうすれば良いのでしょうか?

どうすればいいんですかね……。

---- もしも全く売れなさそうなジャンルが好きだった場合に、1000部、1500部売っていこう、という気になったと思いますか?

いや、なんなかったと思います。

---- 1000部というのは、需要を分かっていた上で設定できた数値、ということでしょうか?

自分の見積もりよりは多く刷ってます。多く見積もらなければ、そんなに刷れませんね。

---- 見積もりというのは、どうやってるんですか?

なんとなくです……これぐらい売れたらいいなぁ、と。

---- それは妄想ではないんですよね。一万部売れたらいいなぁ、とは思わないように。

そうですね。書店委託部数と、搬入部数を考えて、その時にどれくらい余るか。で、何冊余るまでなら許せるか、を考えます。例えば部屋に1000部保管するのはキツいですけど、200〜300部ぐらいなら、片隅に置いておいても大丈夫だなと。

---- 少なく刷って高くするより、余らせてでも多く刷って安くする方が大事と

買ってる側は、何部刷ってるなんて関係ないわけですよね。だから、少なく刷った場合でも安く設定しないと、売れないんじゃないかなと思います。自分の場合、お金がかかるかどうかより、多く頒布することが目的なんです。

---- 夏コミの売り上げはどれくらいでしたか?

24〜25万ぐらいでしたね。

---- コミケで売れなくても同人活動が楽しい、って人もいますよね。

そういう人は、絵を描くのが好きなんじゃないでしょうか。

---- 絵を描くのは嫌いですか?

嫌いなわけじゃないんですけど、絵を描いてるだけで満足感は得られないんです。

---- 絵の練習はしますか?

練習で描いたのがそのまま原稿になってる、みたいなものかもしれません。

---- 練習しないでも絵を上手くなりますか?

それはないと思います。

---- 自分の絵に関して、自信はありますか? 「売れて当然」みたいな。

「売れなくて当然」の絵だと思います(笑)。

---- 売れなくて当然なのに売れてしまう理由は何なんでしょう?

不思議ですね……。

---- 同人活動をしている人に対してアドバイスはありますか?

同じ内容なら、コピー誌よりオフセの方が全然売れるので、オフセにしましょう。

---- クワタさんにとって、同人活動とは何ですか?

「いかにプライドを捨てられるかの場」ですね。

同人誌印刷品質向上計画forデジタルコミッカーズ

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『ドットおち』開発者 kuniさん (id:k_u) インタビュー

SQUARE ENIX主催、第一回 GAME BRAINゲームコンテスト最優秀作品『ドットおち』の開発者、kuniさん (id:k_u) にインタビューさせて頂きました。お忙しい中、ありがとうございました:)

パネキット

パネキット

kuniさんの代表作「パネキット」はPS3ダウンロードコンテンツとして絶賛発売中です :D

http://www.din.or.jp/~ku_/work.htm (kuniさん著作リスト

それでは早速、インタビューへどうぞ。

ゲームコンペへの参加について

--- GAME BRAINに参加したきっかけは?

はてなアンテナ経由で、DS版GAME BRAINが企画されていたというインタビューを知って、興味を持っていた。

子供が学校でも使えるような、スタンドアローンの開発環境が出来てくれるといいな、と応援したくなる。昔はポケコンみたいなものがあった。コンテストなどに応募や投稿をする前に、気軽に友達に見せられるような環境があってくれると良いなと。携帯アプリでも出来なくはないけど、その場で仕組みを見せたりはできないので、単体で出て欲しいなと。

--- ドットおちの開発期間は?

GAME BRAINに慣れる時間も含めて、実質二日ぐらい。

--- 自分で遊ぶと、何点ぐらい稼げますか?

ハイスコアは、調子が良くて5000〜6000点程度。

--- 作った後の手応えは?

目標としていた新奇性を「ありそうでない」くらいに出すことができて、それがプレイヤーにも伝わったようで満足している。

著作権譲渡が前提だったが、譲渡自体よりも、その後でどう活用されるかが気になっていた。幸いにもYahoo!ゲームという人目に付く場所に置かれ、フリーゲームとしての役割は果たせたと思う。どれくらいの人数に遊んでもらえたのかとか、反応が全く返ってこないのは不満だけど。


ゲーム作りの取っ掛かり

まずはGAME BRAIN環境の速度を調べて、計算やキャラ表示が少なめのものが良いかなと。

次に「ジャンプアクション」というテーマを決めた。オーソドクスなジャンルだけど、実は殆ど作ってなかったので。テーマは持ち回りみたいなものなので、深い意味はない。もしダメなら他のテーマで、って感じ。今回は一つ目で上手くまとまった。

ゲームにおける引き算・足し算

よく言われてる「引き算をして作る」というのは、ゲームの場合には、単なる先祖帰りになることが多い。かといって何も無い状態から「足して作る」というのは、ぴったりハマる時はいいけど、量産も難しく、上手くいかない事が多い。組み合わせてもイマイチだった、という事は多々ある。

そこで、よく使っている手段は、「これはつまらない」って所まで一旦減らして、そこから足していくというもの。

--- 減らすというのは、どのぐらいの状態からですか?

地面と敵とプレイヤーが出てくる、ごく普通の2Dジャンプアクションゲームから。

--- 今回は、一旦どこまで削りましたか?

「敵のいないジャンプアクション」というところまで。そこまで行くと、よほどステージを練りこまない限り、つまらないことが明確になる。

そこで敵の持っている性質は何かと考える。「当たると死ぬ」というのもあるけど、敵というのは、一匹二匹と、違う動きのものが混じって迫ってくるのが大きい。そうすると、ジャンプしてこうすり抜ける、みたいな「先の動きを予測しながらのプレイ」というのが面白くなってくる。一匹の動きを予測するのは単純でも、それが何個も畳み掛かることでゲームになっていく。

それなら敵の代わりになる何かが無いかと想像すると、プレイヤーの「経路探査」があるなと思った。頭を使って、どこに向かうのが効果的かを考える楽しみ。とは言え、『巡回セールスマン問題』みたいなのをやらせても楽しくない。「一つの『重い』要素で遊べ」というのは「ゲーム」でなくて「作業」になってしまう可能性が大きく、面が固定されていて、「どういう順で登ったら頂上までたどり着けるか?」という仕様にしたら、よほど上手いステージが作れないと難しいだろうと。

ちなみに、経路探査というのは、「GoogleMapsを使ったゲームって何だろう?」って考えていた時に、「ビルの屋上をジャンプして、一番高いビルにたどり着くようなものは作れないかな?」と考えていたのが発端。

--- 削らないで足しちゃ駄目なんですか?

駄目というわけではないが、調整が難しくなる。

たとえばシューティングに「新しい武器」を追加したとしても、普通に「弾」が撃てたら、それだけでゲームが成り立ってしまう。
もともと上手い人も多い、弾という「古い要素」と、そのゲーム内で上達を促す「新しい要素」が共存すると、どの場面でどちらを活用させるのか、十分に注意して誘導を行わないと、開発者とプレイヤーの間に意識のズレが生まれる。

もちろん、遊び方が広がりを持つのは良いことだが、自分のプレイが本筋なのか横道なのかくらいは判断できないと厳しい。

画期的だったテトリス

テトリスのような落ちものパズルの方法を引用した。落ちゲーが画期的だったのは、それまでのゲームのような「面クリア型」「スクロール型」という方法とは違う、「部分的に消えて詰まることにより、プレイヤー主導で局面を変化できる」というところにあった。「詰まっていく」ことによって、後の展開を予測していく楽しみが出てくる。この方法は応用が効きやすいと思う。
落ちゲーを引用と言っても、「上から何かが落ちてくる」ことをセットで使わなくても構わない。

完成までの調整

--- 一通りゲームになった後はどうしていますか?

更に組み替えることも可能だけど、でも一旦は完成ということにして、プレイヤーの意見を聞くのが良い段階。

たとえば消してしまった敵を、途中から登場させても構わない。敵という「それだけでゲームが成り立ってしまう」要素があると安心してしまうが、ゲームの方向性が決まって、プレイヤーがゲームの流れをつかんでからなら、あまり混乱せずに使える。

また、「付けて、外して」というのを更に繰り返すのも有りなんだけど、それを繰り返しすぎると、良くも悪くも最初のテーマから離れてしまうので注意が必要。特に「目的」や「操作系」に手を出すのは、かなり難しいので覚悟の上で。

誰に向かってゲームを作る?

--- どんなプレイヤーを想定してゲームを作るようにしていますか?

良い結果よりも楽な過程を選んでしまう、ぬるいプレイヤー。

そういうプレイヤーを想定すると、スコアやタイムといった数値の価値が低くなってしまうので、「見ているだけ」「触っているだけ」で楽しい状態を作るのが、より重要になってくる。

ドットおちでは「くっついた状態で消すと高得点」なわけだけど、それは得点と消える面積を連動させて、少しでも画面を派手にしようと努力した結果。
また、「何となくブロックに乗せたくなる」「何となく落ちるとイヤそう」といった基本的な感覚は元のジャンプアクションから継承しているため、「組み替えてはいけないルール」として注意した。

「ノルマや駆け引きの面」と「触っていて面白い」というのが両立するのが理想。

リスク・リターンだけに目がいって、感覚的な面を無視すると痛い目に会う。最低限、自分で触っていて楽しい、ぐらいの操作感になるまでは作りこむようにしている。

細かいルール・仕様について

--- ジャンプの高さが絶妙だと思います。

画面の上下幅から大雑把なジャンプ力を決定したのだが、ジャンプの最高点でブロックにギリギリ届くように調整した。そのため、ブロックが登場する上下位置は8ドット単位と粗くなっている。

--- 空中で、比較的大きく左右に移動できるの理由は?

ドットおちでは、常に経路を考える必要があるので、ギリギリ頭が混乱するぐらいの状態になるように (方向修正できるように)、空中であれだけぶれられるようにした。途中バージョンまでは、慣性が全く着かなかったんだけど、それだと簡単すぎたので修正した。

--- 難易度を上げるために「長いブロック」を出すというのが秀逸だと思いました。繋がりやすく高得点を目指せるリターンと、死にやすくなるというリスクですよね。

狙いはその通り。例えば、上下の振れ幅を大きくする事で難しくしていくと、絶対にクリアできないパターンに直結しやすい。先ほど触れたように、「ビルの屋上をジャンプしていく」というアイディアがあったので、元々のアイディアに先祖帰りをさせただけ。

--- ユーザーはどう楽しんでいくと想定していましたか?

最初は低い方、低い方に飛んでいく。でもって、上に登るのが無くなってゲームオーバー。あ、登っていかないといけないんだなと分かっていく。そしてまとめて消す事を覚える。

この先のゲーム業界

--- 子供たちが、簡単にゲームを作るべきだと思う理由は?

若い世代が作ったゲームを遊んでみたい、という気持ちがある。正直、ゲームに飽きかけてきているので、それでも遊びたくなるような変わったゲームが出てくれればと。

「変わったものに意味があるの?」と言われれば、「さぁ」と答えるしかない(笑)。何にでも多様性は必要な気がするが、どちらかと言えば、一人のプレイヤーとしてのエゴに近いかもしれない。

また、業界的な話になると、若いうちにゲーム作りの面白さに気付いてもらって、少しでも開発者層を広げることは重要と思う。
仕事としてゲーム業界を選んでもらえるような、良い環境を作るほうが効果的かもしれないけど、それはまた別の話として。


参考プレイ


17020点。これはすごいw この人には、私の見えない世界が見えている……。遊ぶ前には見ない方がいいと思います :D

トロ・ステーション第268回


kuniさん登場!

id:k_u 『読みかえしてみて、ちょっとだけ補足を。「触っていて面白い」「感覚的な面」インタラクションと言ったほうが、解りやすい人も多かったかも。「引き算で作っても先祖帰り」 > 特徴的な要素が追加されたゲームから、元々あったオーソドクスな部分を引けば先祖帰りにはならない。が、それはパクりと紙一重。』